銀行融資の攻略法:企業規模に合わせた正しい銀行の選び方
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
資金調達は企業経営において重要な要素です。しかし、多くの中小企業では銀行との取引において戦略的な視点が欠けているのが現状です。
本記事では、企業規模に合わせた適切な銀行選びのポイントについて、詳しく解説していきます。
中小企業における銀行選択の現状と課題
戦略なき銀行選びの実態
多くの中小企業は、銀行との取引において明確な戦略を持っていません。
特に成長ステージに応じた銀行選びという視点が欠如しているケースが目立ちます。
例えば、地方都市で事業を展開する年商5億円程度の企業でも、メガバンクとの取引にこだわる経営者が少なくありません。
しかし、このような選択は必ずしも最適とは言えません。
特に地方都市において、その地域の地方銀行や信用金庫との取引の方が、より柔軟な対応を受けられる可能性が高いのです。
適切な銀行選択の重要性
企業規模と銀行規模のマッチング
銀行選びにおいて最も重要なのは、自社の規模に適した金融機関を選択することです。
例えば、メガバンク(三菱UFJ銀行)の預金規模は約100兆円、地方銀行最大手の横浜銀行で約12兆円と、その規模には大きな開きがあります。
■ 企業規模別の適正な取引先
年商3億円程度の企業であれば信用金庫、30億円程度までなら地方銀行が適切な取引先となります。
この規模感を意識することで、より良好な銀行取引が可能となります。
戦略的な銀行との付き合い方
企業成長に合わせた銀行取引
企業の成長ステージに応じて、適切な金融機関を選択していく必要があります。
例えば、年商10億円規模の企業であれば、信用金庫でも重要顧客として手厚いサービスを受けられる可能性が高く、支店長の訪問や役員の来訪も期待できます。
しかし、融資金額が大きくなるにつれて、より規模の大きな金融機関との取引が必要になってきます。
この際に重要なのは、融資申し込みから審査完了までの期間(リードタイム)です。
企業規模に合わない銀行を選択すると、この期間が長期化したり、融資条件が不利になったりするリスクが生じます。
今後の銀行取引における戦略的アプローチ
企業価値を高める銀行選び
自社の成長戦略に合わせた銀行取引を構築することで、より効果的な資金調達が可能になります。特に重要なのは、手形取引に対する考え方です。
かつては「メガバンクの手形を切っている」ことがステータスとされた時代もありましたが、現代では即時の現金決済や前受金での取引の方が、はるかに価値が高いとされています。
■ 取引関係の見直しポイント
企業の成長に伴い、取引銀行との関係性を定期的に見直すことが重要です。
特に、融資条件や担当者の対応、支援体制などを総合的に評価し、必要に応じて新たな取引先を開拓することも検討します。
銀行との取引は、ビジネスウェアを選ぶように考える必要があります。
体に合わないサイズの服を着用すると動きづらいように、企業規模に合わない銀行との取引は、事業展開の際の制約となる可能性があるのです。
結論として、企業経営者は自社の現在の規模だけでなく、将来の成長も見据えた戦略的な銀行取引を構築していく必要があります。
それによって、安定的な資金調達体制を確立し、持続的な企業成長を実現することが可能となるのです。
まとめ:成功する企業の銀行選びのポイント
企業の資金調達において、銀行選びは経営戦略の重要な要素です。
これまでの内容を踏まえ、以下の3点を特に意識することで、より効果的な銀行取引が可能となります。
■ 自社の規模に合った選択を
企業規模と銀行規模のマッチングは、融資条件や対応スピードに大きく影響します。
年商規模に応じて、信用金庫、地方銀行、メガバンクを適切に選択することが重要です。
地元の金融機関との取引を軽視せず、企業の成長ステージに合わせて段階的に取引先を拡大していくことで、安定的な資金調達が可能となります。
無理に大手銀行との取引にこだわるのではなく、自社にとって最適な関係を築ける金融機関を選ぶことが賢明です。
最後に強調したいのは、銀行取引は一度決めたら終わりではないということです。
企業の成長に合わせて定期的に見直し、必要に応じて新たな取引先を開拓していく。
そうした戦略的な姿勢が、長期的な企業の発展につながっていくのです。
銀行との関係構築は、企業の成長を支える重要な基盤となります。
本記事で解説した内容を参考に、自社に最適な銀行取引の在り方を検討してみてはいかがでしょうか。