クラウドツールの活用 – コスト削減と業務効率化の両立
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週木曜日に、経営者なら知っておきたい「業務効率」についての知識を解説しています。
たくさんの経営者と関わる中で、業務効率化に関して、よく耳にする悩みがあります。
「業務改善のためにクラウドのツールを導入したものの、使いこなせていない」
「せっかく導入したのに、結局従来のやり方に戻ってしまう」 「ツールの導入で余計に手間が増えた」
こうした状況に陥る原因は、多くの場合、ツールありきの導入にあります。
今回は、私の事務所で実践している、目的から考えるクラウドツール活用術をご紹介します。
なぜ今、クラウドツールなのか
「クラウドクラウドと言われるけど、今のやり方で十分では?」という声もよく聞きます。
確かに、クラウドツールは万能ではありません。しかし、適切に活用することで、大きな効果が得られる場面があります。
ペーパーレス化がもたらすもの
例えば、私の事務所では紙の書類を極力なくし、電子データとして保管しています。
その結果、事務所のキャビネットは空になり、最終的に事務所自体も必要なくなってきました。
なぜこれが重要かというと:
- 検索性の向上
- 保管スペースの削減
- 情報共有の効率化
このように、目的を明確にした上でツールを選択することで、本質的な業務改革が可能になります。
PDFを中心としたドキュメント管理
紙の書類をなくすと言っても、ただスキャンして保存するだけでは意味がありません。
重要なのは、必要な時にすぐ取り出せ、効率的に活用できる状態を作ることです。
PDFワークフローの確立
私たちの事務所では、以下のような流れを確立しています:
- 入力:紙の書類はScanSnapですぐにPDF化
- 出力:印刷せずにPDFで送付
- 編集:必要に応じて加工や編集を実施
「でも、PDFって編集が難しくないですか?」よくこう聞かれます。実は、適切なツールを使えば、PDFの取り扱いは想像以上に簡単です。
私の事務所では、SmallPDFやDocuWorksを用途に応じて使い分けています。DocuWorksは最近導入しましたが、非常に使い勝手が良いです。
SmallPDFはちょっとした修正や変換に重宝します。DocuWorksはより本格的な編集や注釈付けが必要な場合に活用しています。
このように、目的に応じて適切なツールを選択することで、効率的なPDF管理が可能になります。
クラウド契約のメリットと活用法
「ハンコ文化」から脱却することは、単なる効率化以上の価値があります。
私はクラウドサインをおすすめしていますが、これにより:
- 契約書の押印・郵送が不要に
- 印紙代のコスト削減
- 契約進捗の可視化
- 保管・管理の効率化
が実現します。
特に重要なのが、リモートワーク時代における契約のスピード感です。地方のクライアントとの契約も、数分で完了することができます。
ただし、導入時には注意点もあります。月間の契約数をしっかり見積もり、適切なプランを選択することが重要です。
無料枠でスタートし、必要に応じてアップグレードしていく戦略をおすすめします。
電話応対の効率化
「経営者の時間を最も奪うもの」の一つが、予期せぬ電話対応です。特に営業電話は、貴重な集中力を削ぐ要因となります。
私の事務所では、無料の留守番専用IP電話を活用して、コストをかけずに効率的な電話対応を実現しています:
- まずは留守番電話で用件を確認
- 必要な案件のみまとめて折り返し
- 顧問先には自分の携帯番号を直接提供
この方法の利点は、コストを抑えながらも、必要な連絡は確実に受けられる点です。
特に役所からの連絡は必ずメッセージが残されるため、重要な連絡を見逃すリスクもありません。
このように、必ずしも高額なサービスを導入する必要はありません。大切なのは、自社の状況に合わせた適切な手段を選択することです。
情報セキュリティの確保
クラウドツールの活用が進むと、必然的にパスワード管理が課題となってきます。
「パスワードを書いたメモが散乱している」という状態は、情報セキュリティ上大きなリスクとなります。
パスワード管理の一元化
様々なクラウドサービスの利用が増えると、必然的にパスワード管理が課題となってきます。
「パスワードを書いたメモが散乱している」という状態は、情報セキュリティ上大きなリスクとなります。
当事務所では、1Passwordなどのパスワード管理ツールを活用し、安全かつ効率的な情報管理を実現しています。
このようなツールを使うことで:
- 強固なパスワードの使用が容易に
- 複数デバイスでの同期が可能
- アプリやサービスへのログインが簡単に
特に、パスワードは「覚えやすく、かつ安全なもの」という相反する要件を満たす必要がありますが、パスワード管理ツールを使うことでこの課題を解決できます。
請求書管理のデジタル化
請求書管理は、多くの企業で依然として手作業が残っている分野です。
特に定期請求の自動化は、業務効率化の大きなポイントとなります。
効率的な請求書発行システムの活用
私の事務所では、Invoyを活用しています。選択の決め手となったポイントは:
- 定期請求の自動化が無料で可能
- PDFをメールに自動添付して送信
- 単発請求や領収書も同一システムで対応可能
特に重要なのが、自動送信なのに共有リンクではなくPDFの直接添付という点です。
クライアントの手間を最小限に抑えることで、スムーズな請求業務が実現できています。
Invoyは無料でここまでの機能を提供してくれるため、コストパフォーマンスの面でも優れています。
導入時の注意点
クラウドツールを導入する際は、以下の点に注意が必要です:
- 既存の業務フローとの整合性
- スタッフのスキルレベル
- 導入コストと効果のバランス
- データのバックアップ体制
特に重要なのは、ツールに業務を合わせるのではなく、業務に合わせてツールを選択するという視点です。
まとめ:目的から考えるツール活用
クラウドツールは、使い方次第で大きな効果を生み出します。
しかし、ツールありきではなく、まず目的を明確にし、それに適したツールを選択することが重要です。
私の経験から、成功のポイントは以下の3つです:
- 目的を明確にする ツールを導入する前に、何を実現したいのかを具体的にイメージします。
- 段階的に導入する 一度に全てを変えるのではなく、小さな成功体験を積み重ねていきます。
- 定期的に見直す 使用状況や効果を定期的に確認し、必要に応じて方法を修正します。
クラウドツールは、あくまでも目的を達成するための手段です。
本シリーズで紹介してきた様々な方法を、ぜひ皆様の状況に合わせてカスタマイズし、より効率的な業務運営を実現してください。
このシリーズを通じて、時間管理から業務効率化、そしてツール活用まで、実践的なアプローチをご紹介してきました。
これらの方法が、皆様のビジネスの成長の一助となれば幸いです。