年商10億円未満の中小企業が「信金・信組」と取引をすべき理由

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

突然ですが、貴社はどの金融機関をメインバンクにされていますか?

「やっぱり安心だからメガバンク」「地元で一番大きい地方銀行かな」といったお声をよく伺います。

知名度や利便性からメガバンクや地方銀行を選ぶお気持ちは、非常によく分かります。

しかし、もし貴社の年商が10億円未満であれば、その選択は少しもったいないかもしれません。

「メガバンクは担当者がすぐに変わって、また一から事業内容を説明するのが大変だ…」

「ちょっとした資金繰りの相談をしたいだけなのに、どうも敷居が高くて…」

こんな風に感じたことはありませんか?

実は、年商10億円未満の中小企業にとって、もっと身近で、もっと親身になってくれる金融機関があります。

それが「信用金庫」や「信用組合」(以下、信金・信組)です。

今回は、「なぜ年商10億円未満の中小企業が信金・信組と取引すべきなのか」、その具体的な理由を4つのポイントに絞って、分かりやすく解説していきます。

理由1:数字だけじゃない!事業の情熱を評価する「地域応援団」

まず大前提として、信金・信組と銀行では、その成り立ちや目的が根本的に異なります。

この違いが、融資の審査スタンスに大きな影響を与えています。

銀行と信金・信組の根本的な違い

銀行(メガバンクや地方銀行)は、株主の利益を最大化することを目的とする「株式会社」です。

一方、信金・信組は、地域社会の発展を第一の目的とする「協同組織」の金融機関であり、利益追求が第一ではありません。

主な取引先は、まさに皆様のような地域の中小企業や個人事業主の方々です。

つまり、信金・信組は、地域の中小企業を支え、発展させること自体を使命としている「応援団」なのです。

「定性的価値」を重視する審査スタンス

この使命の違いは、融資審査の基準に明確に表れます。

メガバンクや地方銀行は、どうしても決算書の数字や担保といった定量的なデータを重視する傾向があります。

もちろん、信金・信組も決算書を精査しますが、それだけではありません。

彼らは、数字だけでは測れない「定性的な価値」をしっかりと評価しようと努めます。

具体的には、以下のような点です。

  • 経営者であるあなたの事業にかける情熱や人柄
  • 事業そのものの将来性や地域社会への貢献度
  • 地域での評判やこれまでの着実な実績

例えば、一時的に赤字決算だったとしても、「この新しい取り組みが軌道に乗れば、地域経済の活性化につながる」と将来性を評価し、融資に踏み切ってくれるケースも決して珍しくありません。

これは、株主利益よりも地域貢献を優先する信金・信組ならではの、最大の強みと言えるでしょう。

理由2:相談のしやすさが段違い!「身の丈に合った取引」

金融機関との付き合いにおいて、「気軽に相談できるか」は非常に重要なポイントです。

この点においても、信金・信組には大きなアドバンテージがあります。

中小企業の案件は「ど真ん中」のストライクゾーン

率直に申し上げて、メガバンクの主なビジネスフィールドは、大企業向けの大口融資です。

年商10億円未満の企業からの数百万~数千万円の融資案件は、彼らにとっては「小口」であり、どうしても優先順位が下がってしまうのが実情です。

一方で、信金・信組にとって、その規模の取引こそが「ど真ん中」であり、最も得意とする主要顧客層となります。

そのため、

「急な仕入れで少しだけ運転資金が必要になった」

「新しい機械を入れたいので、設備投資の相談をしたい」

といった日常的で細やかな資金需要に対しても、非常に丁寧かつスピーディーに対応してくれます。

「うちのような小さな会社が相談しても、相手にされないんじゃないか…」といった心配は一切不要です。

むしろ、信金・信組は、そうした中小企業のこまやかなニーズに応えることで存在価値を発揮しているのです。

理由3:担当者が変わらない!「人」をベースとした信頼関係の構築

メガバンクや地銀と取引のある経営者様が、最もストレスに感じることの一つが「担当者の頻繁な交代」です。

せっかく事業内容や今後の展望を深く理解してもらったのに、1~2年で異動になり、またゼロから関係を構築し直す…この繰り返しに辟易している方も多いのではないでしょうか。

その点、信金・信組は比較的担当者の在任期間が長く、腰を据えてじっくりと付き合えるのが大きな特徴です。

支店長クラスの方も、地域の名士として長くその土地で活動されていることが多く、「〇〇信金の△△さん」といった顔の見える人間関係が築きやすいのです。

担当者が貴社の事業を深く、そして継続的に理解してくれることは、単なる安心感以上のメリットをもたらします。

景気の変動や不測の事態が起きた際も、これまでの信頼関係を土台に、状況に応じた柔軟な融資判断や的確なアドバイスを期待できるでしょう。

機械的なお付き合いではなく、血の通ったパートナーシップを築ける。

これこそが、先行き不透明な時代を乗り越える上で、中小企業にとって何よりの財産となります。

理由4:お金を貸すだけじゃない!本業を伸ばす「経営支援」

「金融機関の役割は、お金を貸すことだけ」そうお考えなら、それはもう過去の話です。

近年、金融庁はすべての金融機関に対して「金融仲介機能の発揮」を強く求めています。

これは、単にお金を貸すだけでなく、取引先の経営課題の解決を積極的にサポートすることを意味します。

この流れを受けて、特に地域に根差す信金・信組は、融資以外のサービスにも非常に力を入れています。

<支援サービスの具体例>

  • ビジネスマッチング
    取引先同士を引き合わせ、新たな販路や提携先を紹介
  • 専門家連携
    税理士や弁護士、ITコンサルタント等と連携した経営改善支援
  • 事業承継・M&A
    後継者不在に悩む企業への包括的なサポート
  • 販路拡大支援
    地域主催の展示会への共同出展やECサイト構築の補助

これらの支援は、「規模が小さいから相手にされない」のではなく、「規模が小さいからこそ、手厚くサポートしてもらえる」という信金・信組ならではの価値の表れです。

メガバンクが持っていないような、地域独自のネットワークや生きた情報を提供してくれる可能性も十分にあります。

単なる資金調達先としてだけでなく、事業を成長させるための「情報収集基地」としても、信金・信組は非常に魅力的な存在なのです。

まとめ:未来を支えるパートナーとして、まずは信金・信組との接点を

今回の要点を改めて整理します。

年商10億円未満の中小企業が信金・信組と付き合うべき理由は以下の通りです。

  1. 評価軸が違う
    決算書の数字だけでなく、経営者の情熱や事業の将来性といった「数字に表れない価値」を評価してくれる。
  2. 相談しやすい
    中小企業の細やかな資金ニーズを主要ターゲットとしており、親身かつ迅速に対応してくれる。
  3. 関係が続く
    担当者が長く、じっくりと向き合ってくれるため、いざという時に頼れる長期的なパートナーシップを築ける。
  4. 支援が手厚い
    融資だけでなく、販路拡大や経営改善など、本業の成長につながる情報や人脈を提供してくれる可能性がある。

もし現在、メガバンクや地方銀行としか取引がないのであれば、それは非常にもったいない状況かもしれません。

信金・信組は、いざという時に貴社を本気で支えてくれる「応援団」になり得る存在です。

すぐにメインバンクを切り替える必要はありません。

まずはサブバンクとしてでも口座を開設し、定期預金を作る、給与振込を利用するなど、少しずつ取引実績を積み重ねていくことを強くお勧めします。

その小さな一歩が、貴社の未来を支える大きな基盤となるはずです。

今回の内容が、皆様の今後の資金調達、そして金融機関との良好な関係構築の一助となれば幸いです。

ご不明な点や具体的な金融機関選びに関するご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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