令和8年改正で経費枠が40万円に?中小企業が使うべき最強の節税対策

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。
毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。
決算が近づくと、多くの社長様から「今期は利益が出そうだから、何か節税対策はないか?」というご相談をいただきます。
もし今、期末に向けて「パソコンの買い替え」や「オフィスの備品購入」を検討されているのであれば、少しだけ待ってください。
令和8年度の税制改正において、中小企業の経営者にとって「見逃せない朗報」が入ってきました。
これは単なる節税の話ではなく、御社の「資金繰り」と「将来の投資戦略」に直結する重要な変更点です。
本記事では、税理士としての視点から、新しくなった経費枠の活用法と、本当に中小企業が使うべき「最強の設備投資減税」について、実務的なノウハウを解説します。
1. 「30万円の壁」が「40万円」へ拡大
これまで、多くの中小企業経営者や経理担当者が意識していた「30万円未満の少額減価償却資産の特例」。
この特例がついに拡充され、上限が「40万円未満」へと引き上げられます。
「たかが10万円」が経営に与えるインパクト
「30万円が40万円になったところで、大した差ではないだろう」
もしそう思われたなら、それは少しもったいない判断かもしれません。
実務の現場にいると、この「10万円の差」が意外と大きいことに気づきます。
これまで、以下のような備品を購入する際、30万円の壁に悩まされた経験はないでしょうか?
- 高性能なハイスペックPC(動画編集や設計用など)
- 来客用のしっかりとした応接セット
- 現場で使う専門的な小型機器・工具
これらは往々にして「35万円」や「38万円」といった価格帯になりがちです。
これまでは30万円を超えていたため、原則通り「資産計上」を行い、数年かけて減価償却(経費化)する必要がありました。
しかし、今回の改正により、これらが「全額、その期の経費(損金)」として一括処理できるようになります。
35万円のものを買って、その年に35万円全額を利益から引ける。
これは、手元のキャッシュフローを考えた際に、非常に大きなメリットとなります。
2. 本当に使うべきは「中小企業経営強化税制(即時償却)」
ただし、厳しいことを申し上げれば、先ほどの「40万円の特例」はあくまで「小物」の話です。
数千万、数億円の売上規模を持つ中小企業が、真に活用すべき制度は他にあります。
私が税理士として、利益が出ている中小企業経営者に強くおすすめしたいのが、今回の改正でも生き残った「中小企業経営強化税制(即時償却)」です。
中小企業だけに許された「特権」
この制度のすごいところは、大企業には認められていない、中小企業だけの特権であるという点です。
一定の要件を満たした設備投資であれば、金額が数百万円、あるいは数千万円単位であっても、買ったその期に100%経費(即時償却)にすることができます。
通常、大型の機械やソフトウェアは、5年や10年かけて経費化するのが税務の常識です。
しかし、この制度を使えば、投資した年に一気に経費計上でき、その分、法人税等の支払いを大幅に抑えることができます。
結果として、投資資金の回収期間を早め、手元資金を厚くすることが可能になるのです。
対象となる主な設備
「うちは製造業じゃないから関係ない」と思われる社長もいらっしゃいますが、この制度は意外と守備範囲が広いです。
- 機械装置(製造ラインなど)
- 工具・器具備品(測定機器など)
- ソフトウェア(業務管理システムなど)
利益が出ている期に、将来の業務効率化につながるシステムや機械を導入し、それを即時償却で節税する。
これこそが、賢い中小企業の「攻めの決算対策」です。
3. 「赤字だから関係ない」は間違い!賃上げ税制の活用法
設備投資と並んで、国が強力に推し進めているのが「賃上げ税制(賃上げ促進税制)」です。
この制度についても、優遇措置が継続されます。
ここで、よくある誤解について触れておきます。
「うちは今期赤字だし、賃上げしても税金のメリット(控除)が受けられないから意味がない」
このように考えて、賃上げや制度活用を諦めていませんか?
実は、これは非常にもったいない判断です。
「繰越控除」という切り札
中小企業向けの賃上げ税制には、「繰越控除」という仕組みが用意されています。
これは、もし当期が赤字で税額控除のメリットを使い切れなくても、その「控除できる権利」を翌年度以降に持ち越せるというものです。
つまり、「今は赤字だが、将来黒字になったときに税金を減らす権利」をストックできるのです。
経営とは、今の期だけを見るものではありません。
「今は苦しいが、将来必ずV字回復させる」
その気概をお持ちの社長であれば、赤字の今こそ、従業員への還元(賃上げ)を行い、組織力を高めつつ、将来の節税枠を確保するという戦略が取れるのです。
4. 「強い会社」を作るための組み合わせ
今回の税制改正のポイントを整理すると、中小企業経営者が取るべき戦略が見えてきます。
- 40万円未満の備品 → 事務効率を上げるPCや備品を一括経費でリプレイスする。
- 大型設備の即時償却 → 生産性を高めるための大型投資を行い、即時償却でキャッシュアウトを抑える。
- 賃上げによる税額控除 → 人材への投資を行い、組織を強化しつつ、将来の税負担減に備える。
これらは単独で使うものではなく、組み合わせて使うものです。
税金を払わないことが目的ではない
最後に、改めてお伝えしたいことがあります。
節税対策の目的は「税金をゼロにすること」ではありません。
「手元にキャッシュを残し、次の成長投資へ回せる強い財務体質を作ること」です。
無駄なものを買って経費を増やすのは、単なる資金の流出です。
しかし、今回ご紹介した制度を活用し、必要なものに投資をして税金を抑えるのは「経営戦略」です。
使える制度はすべて使い倒しましょう。
制度の詳細な要件や、御社の場合どのようなシミュレーションになるかは、専門的な判断が必要です。
決算月が近づいてから慌てるのではなく、今のうちから準備を始めることをお勧めします。

