税務調査の標的は「退職金の出口」にある!iDeCo・共済の重複受給リスク

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。

毎週月曜日に、経営者なら知っておきたい「税務調査」についての知識を解説しています。

「iDeCo」「小規模企業共済」「経営セーフティ共済」「はぐくみ基金」

これらは、節税対策の定番として多くの経営者に親しまれています。

しかし、私たち税理士の視点、そして税務署の調査官の視点から見ると、これらは単なる節税商品ではありません。

これらは、ひとたび扱いを間違えれば、税務調査において「多額の追徴課税」を叩き出すための“格好の獲物”になり得るのです。

銀行員や保険の営業マンは「今の税金が安くなる」というメリットしか語りません。

彼らは、数年後、数十年後にあなたの会社に税務調査が入った時のことまで責任を持ってくれないからです。

今回は、将来の税務調査で「想定外の否認」を受けないために、調査官がどこに目を光らせているのか、現場のリアリティを交えて解説します。

調査官は「退職所得控除の計算ミス」を虎視眈々と狙う

税務調査において、退職金は必ずチェックされる最重要項目の一つです。

金額が大きく、少しのミスで追徴税額が跳ね上がるからです。

その際、調査官が真っ先に確認するのが、「退職所得控除の重複適用」です。

退職金には「大きな非課税枠」と「税額1/2(分離課税)」という特権がありますが、複数の退職金(iDeCoや共済含む)を受け取る場合、複雑な制限がかかります。

「5年・10年ルール」の落とし穴

例えば、「iDeCo」と「会社の退職金」受け取り時期が近い場合、勤続年数の重複とみなされ、控除枠が削られます。

調査官はこの計算が適正に行われているか、過去の個人の確定申告まで遡って徹底的に照合します。

  • 「社長、5年前にiDeCoを受け取っていますね?」
  • 「今回の退職金と期間が重複していますが、控除額の調整はされていますか?」

もしここで計算ミス(控除の二重取り)が発覚すれば、「過少申告」として即座に否認されます。

さらに怖いのが、現在議論されている「期間制限の延長(5年から10年へ)」です。

もし税制改正が行われた場合、調査官は「新ルールに適合しているか」を冷徹に判断します。

「積立を始めた時は5年でよかった」という言い訳は、税務調査の現場では一切通用しません。

「はぐくみ基金」と「社内退職金」の合算漏れリスク

最近流行の「はぐくみ基金(確定給付企業年金)」も、税務調査の現場では要注意項目です。

特に危険なのが、「会社独自の退職金」と「はぐくみ基金」を同年に受け取るケースです。

調査官は、会社の元帳(総勘定元帳)だけでなく、社長個人の所得状況も把握した上で調査に臨みます。 「会社からは3,000万円の退職金。同年に基金から1,000万円の解約金。これ合算して申告されていますか?」

もし別々に計算し、それぞれで控除枠を使っていれば、完全にアウトです。

これは単なる計算ミスではなく、悪質とみなされれば「重加算税」の対象にもなりかねない危険な領域です。

営業マンのシミュレーションには、「税務調査での指摘リスク」までは書かれていないことを肝に銘じてください。

税務調査の最前線:「実質退職」の否認という悪夢

計算上のミスなら修正申告で済みますが、税務調査で最も恐ろしいのは「事実そのものの否認」です。

それが、退職金の「分掌変更(ぶんしょうへんこう)の否認」です。

多くの経営者が、「代表取締役を辞任して会長になれば、退職金を出せる」と考えています。

また、節税のために「形式的な退職」を急ぐケースも後を絶ちません。

しかし、調査官はそんなに甘くありません。彼らは「実態」を見ます。

調査官による「退職の実態」あぶり出しの手口

調査官は、以下のような証拠を積み上げ、「社長、あなたは辞めていませんよね?」と詰め寄ります。

  • 社内資料の確認
    稟議書や契約書に、退職後も元社長のハンコが押されていないか?
  • 物理的環境の確認
    社長室やデスクがそのまま残っていないか?
  • 従業員へのヒアリング
    「最終的な指示は誰が出していますか?」という誘導尋問。
  • 給与の実態
    退職後も、現役時代と変わらない高額な報酬(役員報酬)を得ていないか?

否認された時のペナルティ:往復ビンタ

もし「実質的に退職していない(経営の実権を持ち続けている)」と認定された場合、以下のダブルパンチ(往復ビンタ)を食らいます。

  1. 【法人税】損金否認
    支払った数千万円〜数億円の退職金が「経費」として認められず、過去に遡って莫大な法人税がかかります。
  2. 【所得税】役員賞与認定
    社長個人が受け取ったお金は「退職金」ではなく「役員賞与」とみなされます。
    退職金の優遇税制は一切使えず、最高税率に近い総合課税(所得税+住民税)が襲いかかります。

「登記簿を変えました」「形式上は平取締役です」といった反論は、調査官の前では無力です。

まとめ:調査官に「説明できる出口戦略」はあるか

節税商品(iDeCo、共済、退職金積立など)は、導入すること自体は簡単です。

しかし、それらを「税務調査で否認されないように受け取る」ことは、極めて高度なパズルです。

  • iDeCo
  • 小規模企業共済
  • 倒産防止共済
  • 会社からの退職金

これらを組み合わせる時、あなたの手元には「調査官を納得させる論理的な設計図」がありますか?

「税理士に任せているから大丈夫」と思っていても、一般的な顧問契約では、ここまで複雑な「出口の税務リスク」まで管理しきれていないケースが大半です。

税務署が来るその日に備え、今のうちから「退職金パズル」の整合性を確認しておきたい経営者様は、ぜひご相談ください。

現状の加入商品と将来の受給計画を精査し、調査官から指摘されうるポイントを洗い出し、安全な着地点(出口)をご提案いたします。

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