月給5万・賞与1000万の税務調査!?否認されない唯一の回答とは

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。

毎週月曜日に、経営者なら知っておきたい「税務調査」についての知識を解説しています。

「毎月の役員報酬を極限まで下げて、その分を決算賞与で受け取る」

いわゆる「事前確定届出給与」を活用したスキームは、社会保険料の適正化(削減)策として多くの経営者に知られています。

例えば、「月額報酬5万円、賞与1,000万円」といった形に設定すれば、毎月の手取りを最大化できるため、導入されている経営者様も少なくありません。

しかし、いざ税務署から「税務調査に入ります」と連絡が入った瞬間、このスキームを導入している社長の多くは顔を青くします。

「こんないびつな給料の払い方、絶対に変だと言われる……」

「もし否認されて追徴課税になったらどうしよう……」

その不安なお気持ちは痛いほどよく分かります。

一般的な感覚で見れば、確かに極端な数字に見えるからです。

しかし、数多くの税務調査の現場を知り尽くした私から言わせていただければ、恐れる必要など1ミリもありません。

調査官が「何を狙って」質問してくるのか。

その「意図」と、それに対する「唯一の正解」さえ知っていれば、堂々と切り抜けられるからです。

今回は、税務調査の最前線で実際に交わされる攻防と、私が現場で実践し続けている「鉄板の切り返し」について、包み隠さず公開します。

調査官の罠!「これは社会保険料削減のためですよね?」

税務調査官が貴社の給与台帳を開き、極端に低い月額給与と、突出して高額な賞与の記載を目にしたとします。

彼らは十中八九、穏やかな口調でこう切り出してくるでしょう。

「社長、なぜこんな変わった給与の払い方をしているんですか?」

「やはりこれ、社会保険料を安くするためですか?」

さて、あなたならどう答えますか?

ここで、多くの社長は動揺のあまり、決して言ってはいけない一言を口にしてしまいます。

「いや、その……コンサルタントに言われまして……」

「みんなやっている節税策だと聞いたので……」

はっきり申し上げます。これらは全て「0点」の回答です。

調査官は、世間話や雑談をしたくて質問しているわけではありません。

彼らは常に「言質(げんち)」を取ろうとしているのです。

調査官の真の狙いは「社保」ではなく「利益調整」

ここで重要なのは、税務調査官の本当のターゲットを見誤らないことです。

彼らが最も疑いの目を向けているのは、社会保険料が安くなっていること(これは年金事務所の管轄です)ではありません。

彼らの狙いは「利益調整(租税回避)」の証拠を掴むことです。

  • 「今期は儲かったから、後付けで賞与を出したのではないか?」
  • 「利益が出なさそうだから、急遽給与を下げたのではないか?」

つまり、「恣意的な利益操作が行われていないか」を探っているのです。

ここで社長がオドオドしたり、「コンサルに言われてなんとなく」といった主体性のない回答をしてしまうと、「社長のさじ加減で給料を決め、利益を操作している実態がある」と見なされかねません。

そうなれば、最悪の場合、経費(損金)としての計上を否認される材料にされてしまうのです。

現場で貫く「鉄板の回答」とは

では、調査官の誘導尋問に対し、どのように答えればよいのでしょうか。

私が顧問先の調査に立ち会う際、この質問が飛んできたら迷わずこう答えます(あるいは、社長にこう答えていただくよう徹底しています)。

「資金繰りの平準化(安定化)のためです」

これだけでOKです。余計な言い訳や修飾語は一切必要ありません。

「資金繰りのため」が最強の論理である理由

この回答には、経営戦略として極めて真っ当な合理性があります。

  1. 毎月高額な給料を支払うと、毎月のキャッシュフローが圧迫され、手元資金が不安定になる。
  2. そのため、毎月の支払いは生活に必要な最低限に抑える。
  3. 資金に余裕ができる時期(決算時など)に、まとめて支払う形をとっている。

これは、「会社のお金を守る」という観点から見て、非常に合理的な経営判断です。

税務署に対しては、「節税(社保削減)のため」ではなく、「会社の資金繰りを安定させるための経営判断である」というスタンスを崩してはいけません。

税務署が「ぐうの音も出ない」条件

もちろん、口先だけで「資金繰りのため」と言えば通るわけではありません。

この主張を完璧なものにするためには、大前提となる条件があります。

それは、「事前確定届出給与」の届出書を期限内に提出し、その記載通りに1円の狂いもなく支払っている事実があることです。

税務署という役所は、「ルール(届出)通りに処理されているか」を厳格に見る組織です。

たとえ月給5万円、賞与1,000万円という極端な配分であったとしても、以下の2点が揃っていれば、彼らが個別の給与体系に口出しする権限はありません。

  • 「資金繰りのため」という正当な経営判断(理由)がある
  • 事前の届出通りに、期日・金額を守って納税している

私の経験上、このスタンスを貫いて否認されたケースは一件もありません。

ルールを守っているのですから、堂々としていればいいのです。

本当に怖いのは「社長の万が一」のリスク

さて、ここまでは税務調査の対策についてお話ししましたが、専門家としてどうしてもお伝えしなければならない「別のリスク」があります。

実は、税務調査への回答よりも、このスキームにはもっと致命的になりうる落とし穴が存在するのです。

それは、「月額給与を下げている期間に、社長に万が一のことがあった場合」です。

社長が亡くなった際、会社から遺族に対して支払われる「死亡退職金(弔慰金)」。

これらは相続税対策としても非常に有効ですが、その「非課税枠」や「損金算入限度額」の計算式をご存知でしょうか?

一般的に、これらの限度額は「最終の月額報酬」をベースに計算されます。

「小銭」を拾って「大金」を捨てるな

もし、月給を5万円に下げているタイミングで相続が発生したらどうなるでしょうか?

本来であれば、月額報酬が高ければ数千万円まで非課税で受け取れたはずのお金が、計算上ほとんど認められなくなる恐れがあります。

税務署はここぞとばかりに、形式基準通り「月給5万円」をベースに計算してきます。

「社会保険料という『目の前の小銭』を拾うために、死亡退職金という『将来の大金』をドブに捨てる」

そのような本末転倒な結果になりかねないリスクを、社長は許容できていますか?

まとめ:戦う覚悟がないならやるべきではない

「事前確定届出給与」を活用したスキームは、確かに手取りを増やす強力な手段です。

しかし、これまで解説したように、以下の2つの大きなハードルが伴います。

  1. 税務調査において、調査官の誘導に動じず対峙する心理的プレッシャー
  2. 万が一の際の、保障額減少リスク

もし、「やましいことをしている」と思ってビクビクしたり、リスクを許容できないのであれば、最初からやらない方がマシです。中途半端な覚悟は、税務調査で最大の隙を生みます。

しかし、経営判断として「リスクを承知でやる」と覚悟を決めたのであれば、徹底的にやりましょう。

必要なのは、調査官の顔色を伺うことではありません。

「ルール通りやっている。文句あるか」

そう言い切れるだけの事前準備と、それを代弁して最前線で戦ってくれる税理士の存在です。

あなたの顧問税理士は、調査官の誘導尋問に対して、あなたの前に立って即答してくれますか?

もし、その対応に少しでも不安を感じたなら、一度私にお話しください。

貴社の経営を守るための、最適な防衛策を共に考えましょう。

🤞 税理士だから話せるここだけの話

毎週月曜日に無料でお届けしています。

✅️ ブログでは書ききれない詳細な事例解説
✅️ 経営者の悩みに税理士が直接アドバイス
✅️ 金融機関対策・税務対策の最新情報まで
✅️ その他、購読者限定の特別コンテンツ!

個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーをご覧ください。