銀行融資の新たな選択肢!民営化で変わった「商工中金」の賢い活用術

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
「銀行融資の選択肢を、もう少し増やせないだろうか…」
日々の経営の中で、このように感じている経営者の方は少なくないでしょう。
特に、年商が3億円、5億円、あるいは10億円を超え、事業が新たなステージに進む中で、資金調達の多様化は喫緊の課題です。
そんな経営者の皆様に、ぜひ知っていただきたいのが「商工中金」という金融機関の存在です。
「名前は聞いたことがあるけど、政府系の難しい金融機関でしょ?」
「うちは組合員じゃないから、関係ないと思っていた」
もし、そう思われているなら、非常にもったいない”機会損失”をされているかもしれません。
実は、近年の変化により、商工中金は中小企業にとって非常に心強いパートナーとなり得る存在へと変貌を遂げているのです。
今こそ、多くの経営者にその活用法を知っていただきたいと考えています。
この記事では、意外と知られていない商工中金の”今”と、具体的な活用ノウハウについて、専門家の視点から徹底解説します。
誤解だらけ?「商工中金」の知られざる正体
多くの方が、商工中金を「政府系金融機関」だと思われています。しかし、その認識はすでに過去のものです。
2025年6月の報道にもあったように、政府が保有していた株式はすべて放出され、商工中金は現在、法律上「民間企業」として運営されています。
これは、私たち中小企業にとって何を意味するのでしょうか?
端的に言えば、これまで「民業圧迫(民間銀行の仕事を奪うこと)」を避けるために慎重だった営業姿勢から、より自由度の高い金融サービスを展開できるようになった、ということです。
とはいえ、完全に自由な民間銀行と同じになったわけではありません。今月も複数の商工中金の担当者と話をしてきましたが、今後も政府系金融機関としての機能を一部残しながら、従来の立ち位置を意識した、いわば「準政府系」ともいえる、少し特殊なポジションで活動していくようです。
個人的にはもっと積極的に営業してほしいところですが、この「微妙な立ち位置」こそが、民間銀行とは少し違った視点で企業を評価し、支援してくれる可能性を秘めているのです。
なぜ今、あなたの会社が商工中金と取引すべきなのか?
「民間銀行と付き合いがあれば、それで十分では?」と思われるかもしれません。
しかし、今後の不透明な経済環境を乗り切るためには、資金調達のチャネルを複数持っておくことが、企業の存続を左右する重要な経営戦略となります。
特に、年商5億円前後から10億円以上の規模の企業は、事業拡大に伴い必要な資金額も大きくなり、より多様な資金調達手法が求められます。
民間銀行だけでは対応しきれないニーズが出てくるフェーズとも言えます。
商工中金は、まさにそうした企業の成長を後押しする役割を期待されています。
年商5億円未満の企業では、まだ商工中金と取引がないケースが非常に多いのが実情です。
だからこそ、競合他社がまだ気づいていない今、先んじて取引関係を築いておくことには大きなメリットがあるのです。
取引先金融機関が一社増えるだけでも、企業の財務的な体力、そして経営者の精神的な安心感は大きく変わります。
その有力な選択肢として、商工中金を検討しない手はありません。
【実践編】コンサルタントが教える商工中金の具体的な活用シナリオ3選
では、具体的に商工中金をどのように活用できるのでしょうか。
ここでは、私がお客様にご提案することも多い、代表的な3つの活用パターンをご紹介します。
活用シナリオ1:短期継続融資(短コロ)での機動的な資金繰り
「短コロ」とは、短期継続融資の略称で、手形貸付などを利用して短期の運転資金を機動的に調達し、返済期日が来たら再度借り換える(ころがす)手法です。
急な資金需要や、季節的な資金変動に対応する際に非常に有効です。
商工中金は、こうした企業の細かな資金ニーズにも柔軟に対応してくれる傾向があります。
活用シナリオ2:民間銀行との「協調融資」による大型調達
設備投資や事業拡大などで大きな資金が必要になった際、一つの銀行だけでは融資が難しい場合があります。
そんな時に活用したいのが「協調融資」です。
これは、複数の金融機関が連携して一つの企業に融資を行う仕組みで、商工中金は民間銀行との協調融資にも積極的です。
商工中金が加わることで、融資全体の信頼性が増し、より大きな金額の資金調達が実現しやすくなるというメリットがあります。
活用シナリオ3:ノンバンク等の高金利融資からの借換え
「ノンバンクを利用している企業に、商工中金が融資してくれるわけがない」
これは、非常によくある誤解の一つです。
確かに「業績が悪いから仕方なくノンバンクを使っている」というケースもありますが、建設業や不動産業など、業界の特性上、スピードを重視して一時的にノンバンクを利用している優良企業も少なくありません。
商工中金は、表面的な情報だけでなく、そうした企業の個別の事情や業界特性をしっかりとヒアリングし、将来性があると判断すれば、高金利の借入をより有利な条件の融資に借り換える相談にも乗ってくれます。
これは、財務体質を改善し、キャッシュフローを安定させる上で極めて効果的です。
「組合員じゃないから…」その心配は不要です
商工中金の活用をためらう最大の理由が、「特定の組合員しか利用できない」という思い込みです。結論から言うと、これも誤解です。
もちろん、融資対象は組合とその組合員が基本ですが、組合に未加入の企業でも、融資を申し込むタイミングで中小企業団体に加入するという形で、取引を開始することが可能です。
「その手続きが面倒なのでは?」と不安に思うかもしれませんが、心配は要りません。加入手続きについても、商工中金の担当者が丁寧にサポートしてくれます。
実際、私がご支援しているお客様の多くが、このサポート制度を利用して商工中金との取引を開始し、無事に資金調達を実現されています。
入口のハードルは、皆様が想像されているよりもずっと低いのです。
イメージは一新!まずは「相談だけ」から始めてみませんか?
一昔前は、「商工中金は敷居が高い」「担当者が怖そう」といった声も聞かれました。しかし、現在はまったくそんなことはありません。
民営化を経て、顧客対応は非常に丁寧かつ親切になり、中小企業の悩みに真摯に耳を傾けてくれる、頼れるパートナーといった印象です。
もし、顧問税理士の先生がいらっしゃるなら、「資金調達の選択肢として、商工中金はどうだろうか?」と一度相談してみるのも良いでしょう。
専門家からの後押しがあれば、よりスムーズに話が進むかもしれません。
まとめ:知らないことは、もはやリスクです
今回の内容をまとめましょう。
- 商工中金は、政府系ではなく「民営化」された金融機関である
- 年商5億円前後の企業は、今後の成長のために特に取引を検討すべき
- 組合に未加入でも、加入サポート付きで融資相談が可能
- 高金利からの借換えや短コロ、協調融資など、柔軟な対応が期待できる
商工中金が変化し、新たな活用可能性があることを知らずにいるのは、自ら資金調達のチャンスを逃していることと同義です。
それは、経営上の大きな”リスク”と言えるでしょう。
この記事を読んで少しでも興味を持たれたなら、まずは「情報収集」や「相談だけ」でも構いません。
ぜひ一度、お近くの商工中金に問い合わせてみてください。きっと、あなたの会社の未来を切り拓く、新たな扉が開かれるはずです。