融資の金利は下げられる!業績好調な今こそ実践したい4ステップ

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
「銀行から提示された金利を、そのまま受け入れるしかない」
多くの経営者様が、このように考えていらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、金利は銀行がリスクを判断して決定する重要な指標です。
しかし、それが交渉の余地のない絶対的なものかというと、決してそうではありません。
これまで数多くの企業様の資金繰り改善や銀行融資のご支援をしてきましたが、現場で強く実感するのは、「金利は交渉できる」という事実です。
特に、会社の業績が良い時。これこそが、金利引き下げ交渉における最大のチャンスです。
守りの財務ではなく、「攻めの財務戦略」として金利を見直すことで、会社のキャッシュフローは大きく改善します。
今回は、私がコンサルティングの現場でも実践している、銀行との金利引き下げ交渉を成功させるための具体的な4つのステップを、分かりやすく解説します。
なぜ「業績が良い時」が絶好のタイミングなのか?
まず、なぜ業績が悪い時ではなく「良い時」が交渉のチャンスなのか、その理由からご説明します。
銀行が融資の金利を決定する際、最も重視するのが「貸し倒れリスク」です。
つまり、「この会社に貸したお金は、きちんと返ってくるだろうか?」という点を評価しています。
- 業績が良い会社
- 返済能力が高いと評価されるため、銀行にとって「貸し倒れリスクの低い、優良な融資先」と映ります。
- リスクが低い分、銀行は低い金利を提示しやすくなります。
- 他の金融機関にとっても魅力的な融資先となるため、「借り換え」というカードを使いやすくなります。
- 業績が悪い会社
- 返済能力に懸念があると評価され、「貸し倒れリスクの高い融資先」と見なされます。
- リスクが高い分、金利は高めに設定されがちです。
- そもそも金利交渉どころか、追加融資や返済条件の変更(リスケジュール)の相談がメインとなり、交渉のテーブルに着くこと自体が難しくなります。
つまり、銀行との交渉において自社が優位な立場に立てるのが、まさに業績が良い時なのです。
このタイミングを逃さず、将来の経営基盤をより強固にするためのアクションを起こしましょう。
金利交渉の前に押さえておくべき大原則
具体的なステップに入る前に、一つだけ非常に重要な心構えをお伝えします。
それは、この金利交渉は「両行を天秤にかけるオークション」ではないということです。
これからお伝えする方法は、競合銀行の条件を引き合いに出すため、一見するとメインバンクを脅しているように感じられるかもしれません。
しかし、その本質は全く異なります。あくまで目的は「既存の取引銀行との良好な関係を維持しつつ、より良い条件(適正な金利)を引き出すこと」です。
この大原則を忘れて、単なる価格競争のような交渉をしてしまうと、両方の銀行から不信感を持たれ、かえって関係性が悪化するリスクもあります。
誠実な態度で、自社の状況をしっかりと伝えながら交渉に臨むことが、成功への鍵となります。
ステップ1:交渉の土台作り「競合銀行」の見つけ方
それでは、具体的なステップを見ていきましょう。
最初のステップは、現在の取引銀行(メインバンク)と競合となり得る、別の金融機関を探すことです。
ここでポイントとなるのが、どの金融機関にアプローチするかです。
もちろん、地元の信用金庫やメガバンクなど選択肢は様々ですが、特に有効なケースが多いのが「県外から進出してきている銀行の支店」です。
彼らは、そのエリアでの融資シェアを拡大したいという明確な営業目標を持っています。
そのため、実績作りの一環として、新規の優良な融資先に対しては、かなり積極的な金利条件を提示してくれる傾向があるのです。
まずは、自社の地域にどのような銀行が進出してきているか、情報を集めることから始めてみてください。
ステップ2:具体的な条件を引き出す「肩代わり」の打診
交渉のテーブルに乗せるための「カード」を手に入れるステップです。
ステップ1で見つけた競合銀行にアプローチし、具体的な相談を持ちかけます。
その際のキーワードが「肩代わり」です。
「肩代わり」とは、現在メインバンクで借り入れている融資の残高すべてを、新しい銀行で借り換える(=肩代わりしてもらう)ことを指します。
この「肩代わり」を打診することで、競合銀行は「取引をすべて乗り換えてくれる可能性がある、非常に大きな案件」と捉え、真剣に検討を始めます。
その際、決算書や試算表などの提出を求められますので、しっかりと準備しておきましょう。
そして、ただ相談するだけでなく、「もし借り換える場合、どのくらいの金利でご融資いただけますか?」と、具体的な金利条件の提示を求めてください。
口頭だけでなく、可能であれば金利提示書などの書面で受け取れるのが理想です。
ステップ3&4:メインバンクとの交渉と着地点
競合銀行から有利な金利条件を引き出せたら、いよいよメインバンクとの交渉です。
ここでの伝え方が非常に重要になります。
ステップ3:既存の取引銀行に事実を伝える
現在の取引銀行の担当者に、正直に、かつ丁寧に事実を伝えます。
【伝え方のポイント】
脅しや最後通牒のような高圧的な態度は絶対に避けましょう。
(悪い例)
「〇〇銀行さんからもっと低い金利が出たので、乗り換えます。そちらも金利を下げてください」
(良い例)
「いつもお世話になっております。実は、〇〇銀行さんにご提案いただいたところ、現在の金利よりも低い〇%という条件をご提示いただきました。当方としましては、長年お付き合いのある御行(おんこう)と、今後も取引を継続していきたいと考えております。何とか、金利の見直しをご検討いただくことはできませんでしょうか?」
このように、「あくまで御行と取引を続けたい」という意思を明確に示しつつ、「このままでは取引銀行の変更も検討せざるを得ない」という状況を、誠実に伝えることが重要です。
ステップ4:条件の引き下げを待つ
多くの場合、銀行は優良な取引先を失うことを非常に嫌がります。
融資先を一件失うことは、貸出金の減少だけでなく、付随する手数料収入なども失うことを意味し、担当者や支店の評価にも直結するからです。
そのため、競合銀行から具体的な提示があることを伝えれば、担当者は支店内で稟議を上げ、金利引き下げに向けて動いてくれる可能性が非常に高まります。
結果として、競合銀行と同等か、それに近い、あるいはそれ以下の金利条件を再提示してくれるケースがほとんどです。
まとめ:戦略的な財務活動で、会社の未来を強くする
今回は、業績が良い時にこそ実践したい金利引き下げ交渉の4ステップをご紹介しました。
- 競合となる銀行を探す(県外からの進出組が狙い目)
- 「肩代わり」の打診をする(具体的な金利条件を引き出す)
- 既存の取引銀行に事実を伝える(誠実な姿勢で相談する)
- 条件の引き下げを待つ(相手の出方を待つ)
金利は、一度設定されると見直す機会が少ない「固定費」だと思われがちです。
しかし、実際には交渉によって変動させられる、戦略的なコストです。
わずか0.1%の金利差でも、借入額が大きければ、年間の支払利息は数十万円、数百万円単位で変わってきます。
そのキャッシュは、新たな設備投資や人材採用、事業開発など、会社の未来を創るための貴重な原資となるはずです。
会社の業績が良い今だからこそ、自社の財務状況を見つめ直し、より強い経営基盤を築くための一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
もちろん、こうした具体的な交渉の進め方や、競合銀行の選定などでお困りの際には、いつでも当事務所までご相談ください。