黒字決算だからできる”成長への投資”で節税対策を!

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。
「今期も黒字で着地できそうだ。しかし、その分、法人税の負担が重くのしかかる…」
多くの経営者様が、決算が近づくにつれてこのような悩みを抱えていらっしゃいます。
「利益が出ているのだから、税金を納めるのは当然のこと」と、半ば諦めにも似た気持ちで納税されている方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、その考えは非常にもったいないかもしれません。実は、体力のある「黒字決算」の今だからこそ、将来の成長を見据えた戦略的な法人税対策を打つ絶好の機会なのです。
本記事では、単なるコストカットで終わらない、企業の未来を創るための「攻めの節税」について、具体的な手法を交えながら専門家の視点で徹底解説します。
節税は”目的”ではない!経営者が持つべき新たな視点
まず、最も重要な心構えからお伝えします。
それは、「節税は目的ではなく、企業の成長のための手段である」という視点です。
目先の税金を減らすことだけを考えてしまうと、本質を見誤る可能性があります。
戦略的な法人税対策は、納税額を適正化するだけでなく、企業の経営基盤そのものを強化する効果をもたらします。
具体的には、以下のようなメリットが挙げられます。
- 資金繰りの改善
手元に残るキャッシュが増えることで、運転資金に余裕が生まれます。 - 金融機関からの評価向上
健全な財務体質は、金融機関からの信用を高め、融資審査などで有利に働くことがあります。 - 将来の選択肢の拡大
潤沢な内部留保は、将来のM&Aや大規模な設備投資など、事業拡大の選択肢を大きく広げます。
このように、法人税対策は企業の財務体質を筋肉質にし、持続的な成長を後押しする「経営戦略」そのものなのです。
なぜ「黒字の今」が対策のベストタイミングなのか?
「なぜ、わざわざ利益が出ているうちに対策を?」と疑問に思われるかもしれません。
その答えは、黒字で体力があるからこそ、将来のリスクに備える布石を打てるからです。
繰越欠損金との相殺を見据えた戦略
企業の経営には、良い時もあれば、厳しい時もあります。
今は好調でも、数年後に景気の変動や不測の事態で赤字に陥る可能性はゼロではありません。
そこで有効になるのが、体力があるうちに償却資産などを導入して利益を圧縮しておくという考え方です。
例えば、当期に1,000万円の利益が出ていても、計画的に資産を導入することで課税所得を圧縮できます。
そして、将来万が一赤字になった場合、過去の繰越利益と相殺することで、法人税の負担を軽減できるのです。
これは、いわば未来のリスクに対する「保険」のようなもの。
経営が順調な時にこそ、先を見越したリスクヘッジを行うことが、企業の寿命を延ばす鍵となります。
利益の個人への還元という選択肢
もちろん、事業が安定して黒字を維持できる見通しが立っているのであれば、その利益を役員報酬などを通じて経営者個人に還元し、個人の資産形成に役立てるという道も開けます。
法人として利益を残すか、個人に移転するか。これもまた、企業の体力があるからこそ選べる戦略的な選択肢と言えるでしょう。
時代は変わった!旧来の節税スキームが通用しない理由
節税と聞くと、「全損タイプの生命保険」や「レンタルスキーム(オペレーティングリースなど)」を思い浮かべる経営者様もいらっしゃるかもしれません。
しかし、近年の税制改正や税務当局の監視強化により、これらの旧来型の手法は効果が薄れたり、税務リスクが高まったりと、以前のように使いづらくなっているのが実情です。
では、これからの時代、何が節税対策の主役となるのでしょうか。
その答えは「減価償却の活用」にあります。
法人税対策の新たな主役!「減価償却」を使いこなす
減価償却とは、機械や設備、建物などの高額な資産を取得した際に、その費用を一度に計上するのではなく、法律で定められた耐用年数にわたって分割して費用計上していく会計処理のことです。
この仕組みを戦略的に活用することで、利益を将来に繰り延べ、単年度の納税負担を平準化する効果が期待できます。
特に重要なのは、ただ資産を購入するのではなく、「収益性を備えた償却資産」に投資するという視点です。
つまり、節税効果を得ながら、その資産自体が将来の新たなキャッシュフローを生み出す。
これこそが、現代における最も賢明な法人税対策と言えるでしょう。
【具体例】今、注目すべき収益性を備えた償却資産2選
では、具体的にどのような資産が有効なのでしょうか。
ここでは、現在、多くの企業が導入を検討している代表的な2つの償却資産をご紹介します。
AIサーバー投資:即時償却と収益性を両立する
一つ目は、将来のビジネスに不可欠なインフラとなりつつある「AIサーバー」への投資です。
AIサーバーが注目される最大の理由は、「中小企業経営強化税制」という制度を活用できる点にあります。
この税制は、中小企業の生産性向上を目的とした設備投資を後押しするもので、対象となる設備を導入した場合、取得価額の100%をその事業年度の経費として計上できる「即時償却」が認められています。
例えば、600万円のAIサーバーを導入した場合、通常であれば耐用年数にわたって減価償却していくところを、購入したその年に全額(600万円)を損金として計上できるのです。
これにより、当期の課税所得を大幅に圧縮することが可能になります。
さらに、このAIサーバーは、自社で活用するだけでなく、他社に貸し出すことでレンタル収益を得ることもできます。
1台あたり約600万円(税抜)からと、投資のハードルが比較的低い点も大きな魅力です。
節税と収益確保を同時に実現できる、非常に優れた投資対象と言えます。
外貨両替機:インバウンド需要を取り込む安定収益源
二つ目は、インバウンド需要の回復と共に再び注目を集めている「外貨両替機」です。
外貨両替機は、ホテルや商業施設、観光地などに設置することで、両替手数料を収益源とすることができます。
その最大のメリットは、年利18%という高い収益性が見込める点です。
企業の余剰資金を、ただ銀行に預けておくだけではほとんど金利はつきません。
しかし、この外貨両替機に投資することで、その資金を有効活用し、新たな収益の柱を育てることが可能です。
これもまた、減価償却資産として経費計上しながら、継続的なキャッシュフローを生み出すことができる、法人の余剰資金対策として非常に有効な手段です。
まとめ:戦略的な法人税対策で、企業の未来を創造する
黒字決算は、決して頭を悩ませるだけの重荷ではありません。
それは、企業の未来をより良くするために、次の一手を打つための原動力です。
旧来の節税手法が通用しづらくなった今、減価償却を巧みに活用した「収益性を備えた資産」への投資は、節税効果はもちろんのこと、企業の財務体質を強化し、新たな収益源を確保するという、まさに一石二鳥の戦略です。
適切なタイミングで適切な対策を講じることで、経営の自由度は大きく広がります。
自社にとって最適な選択肢は何か、どのタイミングで実行すべきか。
もし少しでも気になりましたら、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
貴社の状況に合わせた、最適な戦略をご提案いたします。