現金2,000万円の節税対策!資産を減らさない評価額の仕組み

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。

毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。

日々の経営判断において、キャッシュフローの確保は最優先事項かと存じます。

しかし、事業承継や個人の資産防衛という観点に立ったとき、その「守り方」には専門的な知識が不可欠です。

本日は、多くの経営者が直面する「現金の評価額」の問題と、その解決策としての不動産活用、そして絶対に踏んではいけない「商品選びの落とし穴」について、専門家の視点から徹底解説いたします。

「現金は王様」が相続においては最大のリスクになる理由

ビジネスの現場において、「現金は王様(Cash is King)」という格言は真理です。

手元に潤沢なキャッシュがあることは、不測の事態への対応力であり、企業の生存能力そのものと言えます。

私自身、税理士として多くの企業様を拝見する中で、キャッシュリッチであることの強さを日々実感しております。

しかし、視点を「相続・贈与」という資産承継の場面に移すと、話は大きく変わります。

実は、現金をそのままの形で保有し続けることは、資産防衛の観点からは必ずしも正解ではありません。

額面通りに課税されるという現実

理由はシンプルです。現金は「額面通りの評価額」で課税されるからです。

例えば、1億円の現金を保有していた場合、その相続税評価額はそのまま「1億円」となります。

ここにストレートに税率が掛け合わされるため、資産の目減りは避けられません。

「汗水たらして稼いだ利益を、次の世代にできるだけ残したい」

そう願う経営者にとって、現金のまま保有し続けることは、結果として資産を大きく減らすリスクを抱え込むことと同義なのです。

資産の形を変えるだけで評価が下がる?不動産活用のメカニズム

では、具体的にどのように対策を講じればよいのでしょうか。

王道かつ強力な手法として挙げられるのが、現金を「不動産」に変えることです。

不動産を活用した節税対策の最大のメリットは、「圧倒的な評価減効果」にあります。

なぜ不動産だと評価が下がるのか

現金が「額面=評価額」であるのに対し、不動産の相続税評価額は、実際の取引価格(時価)とは異なる基準で計算されます。

  • 土地
    路線価(公示価格の約8割程度)
  • 建物
    固定資産税評価額(建築費の約5〜7割程度)

一般的に、現金1億円を不動産に変えると、その相続税評価額は概ね3,000万円から4,000万円程度まで下がると言われています。

つまり、資産としての価値(時価)は1億円のまま維持しつつ、課税の対象となる金額(評価額)だけを大幅に圧縮できるのです。

これこそが、多くの富裕層や経営者が資産ポートフォリオに不動産を組み込む、シンプルかつ合理的な理由です。

【シミュレーション】現金2,000万円vs小口不動産

ここでは、より現実的な数字として「2,000万円」を例に、現金で持っている場合と、小口不動産を活用した場合の評価額の違いを見てみましょう。

ケース1:現金2,000万円をそのまま保有

  • 実勢価格(価値):2,000万円
  • 相続税評価額:2,000万円
  • 評価減効果:なし

ケース2:小口不動産2,000万円分を購入

  • 実勢価格(価値):2,000万円
  • 相続税評価額:約600万円(※物件や立地により変動します)
  • 評価減効果:約70%圧縮

いかがでしょうか。

同じ「2,000万円」という価値を持つ資産でありながら、形を不動産に変えるだけで、課税対象額を約3割程度(約600万円)まで圧縮することが可能です。

このように、資産の「中身」を入れ替えることで、評価額のギャップ(乖離)を生み出し、合法的に資産を守ることができるのです。

致命的な落とし穴!「匿名組合型」と「任意組合型」の決定的違い

さて、ここからが本記事で最もお伝えしたい重要なポイントです。

「不動産なら何でも良いのか」「小口不動産を買えば節税になるのか」というと、答えは「No」です。

市場に出回っている「小口不動産」と呼ばれる商品には、大きく分けて以下の2種類が存在します。

これらを取り違えると、節税効果が得られないばかりか、資産を失うリスクすらあります。

1. 匿名組合型(節税効果なし・リスク高)

ニュースや広告で「高利回りファンド」として紹介される商品の多くが、この「匿名組合型」です。

  • 仕組み
    不動産そのものではなく、不動産を運営する「会社」に出資する権利(金銭債権)を購入する形態。
  • 税務上の扱い
    相続税評価額の引き下げ効果は一切ありません
    現金を貸し付けているのと同様の評価となります。
  • リスク
    万が一、運営会社が倒産した場合、出資金が戻ってこない「債務不履行」のリスクがあります。
    不動産そのものの所有権を持っていないため、保全されにくいのが特徴です。

2. 任意組合型(節税効果あり・推奨)

私が税理士としてご提案するのは、こちらの「任意組合型」です。

  • 仕組み
    実際の「現物不動産」を、投資家同士で共有持分として所有する形態。
  • 税務上の扱い
    不動産そのものを所有しているとみなされるため、先述した評価額の引き下げが可能になります。
  • 安全性
    不動産の所有権(共有持分)は投資家にあります。
    そのため、運営会社が倒産したとしても、不動産そのものは投資家の資産として残ります。

選ぶべきは「任意組合型」一択

表面的な利回りの良さだけで商品を選んでしまうと、実は「匿名組合型」だったというケースが後を絶ちません。

ご自身で検討される際は、契約形態が必ず「任意組合型」であることを確認してください。

「現物不動産」としての裏付けがあるかどうかが、資産防衛の成否を分けます。

似て非なるもの?リート(REIT)やタワマン節税との違い

不動産を活用した資産運用には、他にも類似の商品がありますが、今回の目的である「相続税対策(評価額圧縮)」においては注意が必要です。

よく比較される「リート」と「タワーマンション」についても触れておきます。

リート(REIT・不動産投資信託)の場合

リートは、証券取引所に上場している投資信託です。

手軽に投資できる反面、税務上の評価は「上場株式」と同様に「時価評価」となります。

つまり、不動産特有の評価額圧縮効果(路線価評価など)は適用されず、相続税対策としての効果は期待できません。

タワーマンション(区分所有)の場合

かつて「タワマン節税」として一世を風靡しましたが、こちらは規制が強化されました。

タワーマンションは、高層階になるほど実勢価格(時価)が高騰する一方で、土地の持分が小さいため評価額が低くなりすぎるという乖離が問題視されました。

その結果、税制改正が行われ、実勢価格と評価額の乖離が大きい物件については評価額が引き上げられる(圧縮率が悪化する)ルールが適用されています。

私たちが推奨する小口不動産の優位性

一方で、今回推奨している「任意組合型の小口不動産」は、区分所有マンションそのものではなく、土地と建物の共有持分を所有する形態が一般的です。

そのため、タワマン節税をターゲットとした税制改正の直接的な規制対象にはなっていないケースが多く、現時点でも安定した評価減効果を享受できる「王道の選択肢」と言えます。

賢い経営者は「本物」を選ぶ

不動産による節税対策は、決して魔法のような裏技ではありません。

国が定めた評価ルール(路線価や固定資産税評価額)に則って適正に計算される、極めてロジカルで王道の手法です。

しかし、その入り口となる「商品選び」を間違えると、期待した効果が得られないどころか、大切な資産をリスクに晒すことになります。

重要なポイントの再確認

  1. 現金は額面評価。不動産に変えることで評価額を圧縮できる。
  2. 見せかけの利回りに惑わされず、「任意組合型(現物不動産)」を選ぶこと。
  3. 運営会社の信用リスクを回避するため、所有権を持てる商品を選ぶこと。

「怪しい投資話」と「王道の資産防衛」を見分けるリテラシーが、経営者の皆様には求められています。

大切な会社とご家族に資産を残すため、表面的な手軽さだけでなく、その法的な「中身」を正しく理解した上で、賢い選択をしてください。

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