インフレ時代の節税対策!現金を不動産に換えて資産を守る「資産防衛」の新常識

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。
毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。
円安や物価高のニュースを見ない日はありません。
資材価格の高騰やコストプッシュ型のインフレに、頭を悩ませている経営者の方も多いのではないでしょうか。
私たち税理士の仕事は、長らく「いかに税金を減らすか」という点に主眼が置かれてきました。
利益が出れば、それをどう圧縮し、手残りキャッシュを最大化するか。それが最大のミッションでした。
しかし、近年の急激な円安やインフレの進行により、その前提条件が大きく変わりつつあります。
「現金を持っていること」自体がリスクになり得る時代において、経営者はどのような判断を下すべきなのか。
今回は、単なる税金対策の枠を超え、大切な資産の価値そのものを守る「資産の組み替え」という視点から、インフレ時代における賢い資産防衛術についてお話しします。
なぜ今、これまでの「節税」だけでは不十分なのか
これまで、多くの中小企業経営者にとってのゴールは「キャッシュ(現金)を残すこと」でした。
しかし、昨今の経済情勢はその常識を揺るがしています。
日本円の価値が目減りし続ける一方で、不動産や株式といった「実物資産」の価値は相対的に上昇しています。
一生懸命ビジネスで稼ぎ出した利益を、ただ銀行口座に「現金」として寝かせておくことは、インフレ時代において実は大きなリスクになり得ます。
額面の金額は変わらなくても、そのお金で買えるものの量(購買力)が下がってしまうからです。
これからの経営者に求められるのは、単に税金を減らすことだけではありません。
「相続税対策(節税)」と「インフレヘッジ(資産価値の維持)」を同時に叶える資産承継の視点が必要です。
「資産の組み替え」が現金を最強の防衛策に変える
では、具体的にどのような対策が有効なのでしょうか。
私が現在、多くの経営者様にご提案しているのが、現金を「小口不動産」へ換えるという手法です。
これは「資産の組み替え」と呼ばれるアプローチです。
仕組みは非常にシンプルですが、税務上の効果は絶大です。
現金1億円を不動産に換えた場合のインパクト
例えば、手元にある現金1億円を不動産に換えたとします。
現金で持っていれば、相続税評価額はもちろん「1億円」のままです。
しかし、これを不動産という形に変えることで、相続税評価額を3,000万円から4,000万円程度まで圧縮することが可能になります。
これが、不動産活用による王道の「節税」効果です。
現金のまま持っているよりも、課税対象となる評価額を大幅に下げることで、将来発生する相続税や贈与税の負担を軽減することができます。
インフレヘッジとしての機能
さらに重要なのが、インフレへの対抗策としての側面です。
一般的に、物価が上昇する局面では、不動産価格や賃料も上昇する傾向にあります。
現物不動産を持つことは、現金の価値下落に対する「インフレヘッジ」の効果が大いに期待できるのです。
つまり、「現金を不動産に換える」という行為そのものが、以下の2つのメリットを同時に享受できる、最強の資産防衛策となります。
- 節税効果
相続税評価額の圧縮による税負担の軽減 - 資産防衛
インフレによる貨幣価値下落のリスクヘッジ
不動産価格が下がったら損をする?リスクへの本音
ここまでの話を聞いて、鋭い経営者の方であれば、すぐに次のような疑問が浮かぶはずです。
「言っていることはわかる。でも、不動産投資には価格下落リスクがあるじゃないか」
「せっかく節税できても、物件価格そのものが下がって損をしたら本末転倒ではないか」
その懸念はもっともです。投資である以上、元本保証はありません。
しかし、税理士として数字を分析すると、小口不動産を活用した対策は、「投資単体で見るよりも非常に負けにくい構造」になっていることがわかります。
その理由は、「相続税対策としてのリターン(節税効果)」という強力な下支えがあるからです。
シミュレーションで見る「負けない」構造
具体的な数字を用いて検証してみましょう。
ここでは、2,000万円を小口不動産に投資した場合をシミュレーションします。
不動産市況が悪化し、売却時に物件価格が下がってしまった場合、果たして投資家は損をするのでしょうか。
【悲観シナリオ:物件価格が30%も暴落した場合】
もし、購入した不動産の価格が30%も下落してしまったらどうなるでしょうか。
通常の不動産投資であれば、これは明らかな「大損」です。
資産価値が3割も消し飛んでしまったわけですから、失敗と言わざるを得ません。
しかし、このスキームにおいては、見え方が異なります。
ここで考慮すべきは、不動産に換えたことによって圧縮できた「相続税や贈与税の節税メリット」です。
本来払うはずだった多額の税金を払わずに済んだ分を「リターン」として加味して計算すると、驚くべき結果が出ます。
なんと、物件価格が30%暴落したとしても、節税効果と合わせると、トータルリターンは投資額の約1.5倍となります。
【標準シナリオ:物件価格が横ばいの場合】
では、物件価格が変わらなかった場合はどうでしょうか。
この場合、トータルリターンは約1.7倍となります。
リスクを吸収する「節税」というクッション
このシミュレーションから分かることは明確です。
仮に投資対象である不動産の価値が大きく下落したとしても、「節税効果」という強力なクッション(安全装置)があるため、トータルではプラスのリターンが期待できるのです。
これが、私がこの手法を「負けにくい資産防衛策」として推奨する理由です。
単なる利回り狙いの投資ではなく、税務メリットを組み合わせることで、事業経営と同じように、リスクコントロールされた資産形成が可能になります。
まとめ:単なる「申告業務」から「資産防衛」へ
今回は、インフレ時代における資産の守り方についてお話ししました。
これまでの税理士業務は、過去の数字を正確にまとめ、申告書を作成することが中心でした。
しかし、外部環境が激変する現代において、それだけではお客様の大切な資産を守り抜くことはできません。
今求められているのは、お客様のライフプランや資産全体に寄り添い、「日本円の価値低下」というマクロな経済変化にも対応した、先回りの提案です。
- 「税金対策のために、とりあえず不動産を買う」
これからは、その考えをもう一歩進めてみてください。
- 「大切な資産の価値を目減りさせないために、現金を不動産に組み替える」
この視点を持つことこそが、インフレ時代を生き抜く経営者の賢い選択であり、次世代へ確実にバトンを渡すための最適解だと言えるでしょう。
