銀行融資で「経営者保証」を外すための3つの条件と具体的な進め方

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

「会社の借金は、社長個人が保証するのが当然だ」

「万が一のことがあれば、自宅や個人資産を全て投げ打ってでも責任を果たす」

銀行融資について、長年このように考えてこられた経営者様は非常に多いのではないでしょうか。

会社の万が一と、ご自身やご家族の人生が常に隣り合わせにあるという重圧は、計り知れないものがあります。

しかし、その「当たり前」とされてきた常識が、今大きく変わろうとしています。

実は、国の方針転換もあり、中小企業であっても「経営者保証(連帯保証)」を外せる可能性が大きく広がっているのです。

今回は、多くの経営者様を長年苦しめてきた「経営者保証という重荷」を下ろし、精神的な安心と経営の自由度を手に入れるための具体的な方法について、専門家の視点から分かりやすく解説してまいります。

「うちみたいな会社には無理…」その思い込みが最大の壁です

「経営者保証を外せるなんて、一部の優良な大企業だけの話だろう」

「保証を外してほしいと銀行に切り出したら、心証を悪くして今後の融資に響くのではないか…」

このように考え、最初から諦めてしまっている経営者様が非常に多いのが実情です。ですが、それは大きな誤解です。

現在、金融庁や中小企業庁は、むしろ経営者保証に依存しない融資を積極的に推進しています。

金融機関側にも「保証を求めないことを検討する」こと、そして保証を求める場合にはその理由を説明する責任を課しています。

とはいえ、待っていても金融機関の担当者から「社長、そろそろ保証を外しませんか?」と親切に提案されるケースは、残念ながらほとんどありません。

だからこそ、経営者様ご自身が「保証は外せるものだ」という正しい知識を持ち、自ら声を上げることが何よりも重要なのです。

適切な条件さえしっかりと整えれば、中小企業であっても経営者保証を外すことは十分に可能です。

この記事を読み終える頃には、「もしかしたら、うちの会社でも実現できるかもしれない」と思っていただけるはずです。

銀行が納得する!経営者保証を「外せる会社」の3つの鉄則

では、金融機関はどのような基準で「この会社なら、社長個人の保証がなくても大丈夫だ」と判断するのでしょうか。

会社の規模や業種以上に、実は以下の3つの「経営の健全さ」が極めて重視されます。

条件1:法人と個人の資産が明確に分離されているか(公私混同の根絶)

これは最も基本的ながら、最も重要なポイントです。

一言でいえば、「会社のカネと個人のカネが完全に分かれている」ということです。

例えば、以下のような点に心当たりはないでしょうか。

  • 社長のプライベートな食事代やゴルフ代を会社の経費で処理している
  • 個人的な借入の返済を会社の資金から行っている
  • 社長への「役員貸付金」や使途不明の「仮払金」が整理されず、長年放置されている

これらは「公私混同」と見なされ、金融機関からの信頼を著しく損なう原因となります。

会社の通帳と個人の通帳のお金の流れが明確に分けられ、第三者から見て一点の曇りもないクリーンな状態であることが、保証解除に向けた大前提です。

条件2:健全な財務内容であるか(利益体質の証明)

次に、会社の「体力」が問われます。

具体的には、継続的に利益を出し、自己資本を積み上げている実績が評価されます。

金融機関が特に注目するのは、以下のポイントです。

  • 2期連続で赤字になっていないか
  • 債務超過に陥っていないか(資産よりも負債が多い状態)

毎年きちんと利益を確保し、その利益を内部留保(自己資本)として少しずつでも蓄積している。

「この会社はしっかりと利益を出せる体質で、財務的な体力もあるな」と金融機関に認めてもらうことが重要です。

条件3:経営状況をタイムリーに把握し、情報開示しているか(透明性の確保)

年に一度、決算書を税理士に作ってもらい提出する。

それだけでは金融機関との信頼関係を築くには不十分です。

求められるのは、経営の「透明性」です。

具体的には、少なくとも四半期に一度、できれば毎月、以下のような資料を作成し、金融機関に持参して業績を報告する姿勢が不可欠です。

  • 月次試算表
    毎月の経営成績や財務状況を示すレポート
  • 資金繰り表
    将来のお金の出入りを予測し、管理するための表

「今月は受注が好調で、売上が計画を上回っています」

「来月は大きな支払いがあるので一時的に資金がタイトになりますが、このように手を打っています」

といったように、自社の状況を正確に把握し、良い時も悪い時も包み隠さず報告・相談できる関係性を築けているか。

この「情報開示の透明性」こそが、金融機関からの絶対的な信頼を勝ち取る鍵となるのです。

これらの3つの条件は、決して特別なことではありません。

いずれも、金融機関のためだけではなく、変化に強い会社を作るために欠かせない、経営の基本とも言える項目です。

個人資産を守るだけじゃない!保証を外すことで開ける、経営の未来

経営者保証を外すメリットは、単に「万が一の時に個人資産を守れる」というリスクヘッジだけにとどまりません。

計り知れないほど大きな、経営上のメリットが得られます。

  • 精神的な負担からの解放
    「会社が倒産したら、家族を路頭に迷わせてしまう」という絶え間ないプレッシャーから解放され、心に大きな余裕が生まれます。
    この精神的な安定は、日々の冷静な経営判断や、未来に向けた前向きな挑戦意欲に直結します。
  • スムーズな事業承継の実現
    後継者問題に悩む企業にとって、これは非常に大きなメリットです。
    たとえ優秀な後継者がいたとしても、代表取締役に就任すると同時に、個人として数億円もの連帯保証を引き継がなければならないとしたら、誰でも躊躇してしまいます。
    保証を外しておくことで、後継者は経営そのものに集中でき、事業承継のハードルを劇的に下げることができます。
  • 新たなチャレンジへの道が開ける
    個人保証という“足かせ”がなくなることで、思い切った設備投資や新規事業への進出など、会社の成長に向けた次の一手を格段に打ちやすくなります。
    金融機関ともより対等なパートナーシップを築け、未来に向けた建設的な融資の相談もしやすくなるでしょう。

経営者保証の解除は、社長ご自身の人生を守るだけでなく、会社の未来の可能性を大きく広げるための、極めて重要な経営戦略なのです。

さあ、最初の一歩を。保証解除への具体的な進め方

「うちの会社も、条件を整えれば可能性があるかもしれない」

そう感じていただけたなら、次はいよいよ行動に移すステップです。

保証解除を実現するためには、先ほど挙げた3つの条件を整備することに加え、金融機関との信頼関係を地道に築いていくことが不可欠です。

そのためには、日々の積み重ねが何よりも大切になります。

  • 金融機関から求められる前に、こちらから試算表などの資料を提出する
  • 今後の事業計画や現在抱えている経営課題について、率直に相談する
  • 業績が良い時も悪い時も、正直に、そしてタイムリーに報告を続ける

こうした誠実なコミュニケーションが、「この社長なら信頼できる」という評価につながり、保証解除の交渉をスムーズに進める土台となります。

まとめ:専門家と共に、経営の自由を手に入れる

経営者保証の解除は、もはや一部の大企業だけのものではありません。

年商が数億円規模の中小企業であっても、一つひとつ準備をすれば十分に実現可能です。

とはいえ、具体的に何から手をつければいいのか、自社の現状をどう評価すればいいのか、そして銀行とどう交渉を進めれば有利になるのか、専門的な知識と戦略が必要となる場面も少なくありません。

そこで、まずはお気軽に、経営者保証の解除に詳しい専門家にご相談ください。

貴社の財務状況を客観的に分析し、保証解除の可能性があるかどうか、もし可能性があるとすれば、いつ、何を、どのように進めていくべきか、具体的なロードマップをご提示いたします。専門家のサポートがあれば、実現の可能性は飛躍的に高まります。

会社の未来、そして社長ご自身とご家族の未来のために、勇気ある一歩を踏み出してみませんか。

今回の内容が、皆様の今後の資金調達、そして経営の一助となれば幸いです。

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