銀行融資を有利に進める第一歩!社長が押さえるべき融資の4つの「型」

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

「銀行ともっと上手く付き合いたい」「融資の条件を少しでも良くしたい」

多くの中小企業経営者様が、銀行融資についてこのような思いを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

銀行融資に関する知識は、会社の未来を大きく左右する重要な武器となります。

融資の「基本」を体系的に理解し、実践することで、銀行との関係性を大きく改善できるのです。

これは決して小手先のテクニックの話ではありません。

実際に、私のアドバイスを基に経営者様ご自身で銀行と交渉し、見事に金利引き下げを実現されたお客様も少なくありません。

この記事では、すべての銀行融資の土台となる「形式」と「資金使途」という2つの重要な切り口について、分かりやすく解説していきます。

銀行との対等なコミュニケーションの第一歩として、ぜひ最後までお付き合いください。

融資の全体像を掴む!形式による4つの基本区分

銀行融資と一言でいっても、その内容は様々です。

まずは融資の「幹」となる、形式による4つの大きな区分を理解することから始めましょう。

これからご紹介する4つの「型」を知ることで、銀行が提示してくる融資提案の意図を正確に読み解くことができるようになります。

  1. 手形割引(割引)
  2. 手形貸付(手貸)
  3. 証書貸付(証貸)
  4. 当座貸越(当貸・枠貸し)

それぞれに特徴があり、利用される場面も異なります。一つずつ詳しく見ていきましょう。

【短期融資の代表格】手形割引と手形貸付の違いとは?

手形取引のある企業にとって馴染み深いのが「手形割引」と「手形貸付」です。

どちらも短期の資金調達に利用されますが、その性質は大きく異なります。

手形割引(割引):他社の手形を現金化する

手形割引とは、得意先から受け取った商業手形を、支払期日が来る前に銀行に買い取ってもらうことで現金化する取引です。

急な資金需要が発生した際に、早期に売掛金を回収できる便利な方法です。

ただし、ここで注意したいのが、もしその手形が不渡り(支払期日にお金が支払われないこと)になった場合、銀行は手形を売った人(つまり、あなたの会社)に対して買い戻しを請求できるという点です。

会計上は「手形売却損」として処理されますが、この仕組みがあるため、実質的には「手形を担保にした融資」と考えることができます。

では、この取引における信用の対象はどこになるのでしょうか?

  • 上場企業など信用力が非常に高い企業が発行した手形の場合
    →その「発行者の信用力」を基に割り引かれます。
  • 一般的な中小企業が発行した手形の場合
    →その「手形を持ち込んだあなたの会社の信用力」が重視されます。

つまり、取引先の信用力だけでなく、自社の信用力が割引の可否や金利に影響するのです。

手形貸付(手貸):自社の手形を担保にする

手形貸付とは、返済の担保として「自社で振り出した約束手形」を銀行に差し入れて融資を受ける、短期の貸付形式です。

なぜ自社の手形が強力な担保になるのでしょうか。

それは、手形は2回不渡りを出すと「銀行取引停止処分」という、事実上の倒産にも繋がりかねない非常に重いペナルティが課されるためです。

この仕組みがあるからこそ、銀行は手形を確実な返済を約束する担保として評価するのです。

複数の手形割引を行うのが煩雑な場合に、「その金額をまとめて貸すので、代わりにあなたの会社が手形を振り出してください」といった形で利用されることもあります。

【中長期融資の王道】証書貸付の仕組みと活用場面

おそらく、多くの経営者様が「銀行から融資を受ける」と聞いて、真っ先にイメージするのがこの証書貸付(しょうしょかしつけ)ではないでしょうか。

証書貸付とは、「金銭消費貸借契約証書(通称:金消契約)」を銀行と取り交わし、その契約内容に基づいて分割で返済していく、最も一般的でオーソドックスな融資形式です。

  • 用途
    設備投資(機械、車両、不動産の購入など)や、長期の運転資金など、まとまった資金調達に利用されます。
  • 返済期間
    3年、5年、10年といった中長期の期間で、毎月決まった額を返済していくのが一般的です。

事業の成長に欠かせない設備投資など、大きな資金を計画的に調達・返済していく際の基本となる融資形態が、この証書貸付です。

【上級者向け】当座貸越(枠貸し)のメリットと銀行側の本音

最後にご紹介するのが、当座貸越(とうざかしこし)です。これは「コミットメントライン」や「枠貸し」とも呼ばれます。

当座貸越とは、あらかじめ契約した一定の限度額(極度額、枠)の範囲内であれば、いつでも自由に資金の借入と返済ができるという、非常に柔軟性の高い融資形式です。

  • 借り手側のメリット
    必要な時に必要な分だけ借り入れ、資金に余裕ができたらいつでも返済できます。
    ATMのような感覚で利用できるため、急な資金不足に備えることができ、経営の安定に大きく貢献します。
  • 銀行側のリスク
    借り手にとっては非常に便利な一方、銀行にとってはリスクの高い商品です。
    なぜなら、企業の業績が悪化しても、契約した枠の上限に達するまで銀行側は融資を実行し続けなければならず、異変に気づいたときには手遅れになっている(貸し倒れになる)可能性があるからです。

こうした背景から、現在では当座貸越の契約は信用力の高い優良企業向けに限定される傾向にあり、融資商品全体としては縮小傾向にあります。

もし銀行からこの当座貸越の提案があれば、それはあなたの会社が高く評価されている証と考えることもできるでしょう。

融資交渉の重要ポイント!「何に使うか」で変わる資金使途の区分

ここまで融資の「形式」について見てきましたが、もう一つ非常に重要な区分があります。

それが「資金使途(しきんしと)」、つまり「何にお金を使うのか」ということです。

銀行は融資の審査において、この資金使途を極めて重視します。

主な資金使途には以下のようなものがあります。

  • 運転資金
    事業を継続していくために日常的に必要なお金(商品の仕入、人件費や家賃の支払いなど)
  • 設備資金
    事業を拡大・効率化するための機械や不動産などを購入するためのお金
  • 決算資金・賞与資金
    法人税などの納税や、従業員へのボーナスの支払いに充てるお金
  • 肩代わり資金
    他の金融機関からの借入金を返済するために、新たな銀行から借りるお金(借換)

この中で、銀行との交渉において特に重要となるのが「運転資金」と「設備資金」です。

特に「運転資金」については、その必要額をどう算出し、銀行にどう説明するかによって、融資の結果が大きく変わってきます。

この運転資金の考え方については、非常に奥が深く、交渉の勘所となりますので、別の記事でさらに詳しく解説したいと思います。

まとめ:融資の「幹」を理解し、主体的な銀行対応へ

今回は、銀行融資の基本となる「形式による4つの区分」と「資金使途による区分」について解説しました。

  • 手形割引・手形貸付
    短期的な資金繰りのための融資
  • 証書貸付
    中長期的な投資のための、最も一般的な融資
  • 当座貸越
    柔軟性の高い、優良企業向けの融資

これらの「型」と、そのお金が「何に使われるのか」を明確に理解すること。

これが、銀行の提案を正しく理解し、自社の状況に最適な条件を引き出すための全ての土台(幹)となります。

まずは今回ご紹介した内容を、今後の銀行担当者とのコミュニケーションにぜひお役立てください。

基本的な知識を身につけることで、これまで受け身だった銀行対応を、より主体的で戦略的なものに変えていくことができるはずです。

ご不明な点や、自社の場合はどうなのかといった具体的なご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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