銀行員からの「50万円だけ借りて」は罠?本気度を見抜くプロの質問

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

「社長、今月のノルマがあと少しなんです。50万円だけでいいので借りてもらえませんか?」

「すぐに返してくれても構いませんから、とにかく口座を作って実績をください!」

決算月や月末が近づくと、見慣れない信用金庫や信用組合の若い担当者が飛び込みでやってきて、このようなお願いをされることはありませんか?

資金繰りに困っていない経営者様からすれば、「利息がもったいないし、手続きも面倒くさい」と断りたくなるのが普通でしょう。

しかし、これを単なる「迷惑な営業」と切り捨ててしまうのは、実は少々もったいないことなのです。

なぜなら、この申し出は将来の優良なメインバンク候補を見極める絶好のチャンスになり得るからです。

もちろん、何も考えずに言われるがまま借りてはいけません。そこには明確なリスクも存在します。

今回は、税理士として数多くの融資現場を見てきた経験から、その銀行が「御社と本気で長く付き合いたいのか」、それとも「ただの捨て駒(ノルマ調整)にしたいのか」、その本音を一発で見抜くための「リトマス試験紙的なテクニック」を解説します。

そもそも、なぜ銀行は「50万円」という半端な額を頼むのか?

まず、なぜ彼らは50万円や100万円といった、事業資金としては少額な融資をお願いしてくるのでしょうか。

銀行側の事情を紐解くと、理由は大きく2つのパターンに分かれます。

1. 担当者個人のノルマ(件数稼ぎ)

単純に担当者が上司から「新規の融資先件数を増やせ」と詰められているケースです。

この場合、担当者の頭にあるのは「自分の目標達成」だけ。御社の事業内容や将来性にはあまり興味がありません。

そのため、借りた後に丁寧なフォローがなされることは期待できません。

2. 銀行としての戦略(ドアノック商品)

銀行が組織として「まずは少額でも実績を作って、この会社との関係を始めたい」と考えているケースです。

これを金融用語で「ドアノック(ドアを開けるための)」アプローチと呼びます。

まずは口座を作ってもらい、少額融資で返済実績を確認した上で、将来的には大きな設備投資や運転資金の提案をしたいという「布石」です。

経営者にとってメリットがあるのは、当然「2」のパターンです。

しかし、担当者の口ぶりだけでは、どちらなのか判断できません。

「一生懸命やります!」「御社のためになります!」というのは、どの営業マンでも言う常套句だからです。

安易な「お付き合い」は危険!借入件数が増えるリスク

「まあ、50万くらいなら付き合ってやるか」

その社長の優しさが、実は会社の信用を傷つけるあだになることがあります。

銀行融資の審査において、銀行員は必ず他行からの借入状況(借入残高や借入先数)をチェックします。この時、「借入件数(何行から借りているか)」は非常に重要な指標となります。

もし、御社が既に3行と取引していて、そこに今回の50万円のために4行目が追加されたとします。

決算書や信用情報を他行が見たとき、どう映るでしょうか。

  • 「あちこちの銀行から少額ずつ摘んでいるな」
  • 「資金繰りが忙しくて、手当たり次第に借りているのではないか?」

このように見なされ、本命のメインバンクからの評価(格付け)を下げる要因になりかねないのです。

将来的に本当に資金が必要になった際、「借入件数が多すぎる」という理由で融資が通りにくくなっては本末転倒です。

したがって、「今後も付き合う気のない銀行」から、義理だけで借りるのは百害あって一利なしと断言できます。

銀行の本気度を試すキラーフレーズ「支店長を連れてきて」

では、その銀行がリスクを負ってでも「付き合う価値のある相手」かどうか、どうやって見極めればよいのでしょうか。

担当者が「お願い」に来たとき、こう切り返してください。これが最強の選別テクニックです。

「わかりました。前向きに検討させていただきますので、一度、支店長と一緒に来てもらえますか?」

これが、その銀行の「本気度」をあぶり出すリトマス試験紙となります。

なぜ「支店長」なのか?

銀行という組織において、支店長は支店の最高責任者であり、同時に「最大の決裁権者」です。

支店長の時間は、その支店にとって最も貴重なリソースです。

その時間を御社のために割くことができるかどうかが、銀行の姿勢を如実に表します。

相手の反応でわかる「合格」と「不合格」のライン

この質問を投げかけた後の反応で、その銀行と付き合うべきかが明確に分かります。

【合格】すぐに支店長が挨拶に来た場合

その銀行は「本気」です。

支店長が動くということは、銀行組織として御社を「重要顧客(プロスペクト)」として認識している証拠です。

「たかだか50万円の案件で支店長が動く」というのは、金額以上の価値を御社に見出しているからです。

この場合は、50万円を借りて口座を開設し、パイプを作っておく価値が大いにあります。

【不合格】「いや、支店長は忙しくて…」と渋る場合

残念ながら、その程度の扱いです。

担当者が自分のノルマのために動いているだけで、支店長を動かすほどの案件だとは社内で認識されていません。

あるいは、支店長自身が新規開拓に意欲がない「事なかれ主義」の可能性もあります。

このような銀行と付き合ってもメリットはありませんので、丁重にお断りしましょう。

利息は「交際費」と割り切る戦略的思考

もし「合格」パターンの銀行であれば、私は借りることを推奨します。

50万円の融資であれば、金利が多少高くても、支払う利息の絶対額は微々たるものです。

経営において、この利息は「将来のための交際費」あるいは「保険料」と考えてください。

支店長が顔を見せに来るということは、融資の決裁権者と直接ラインがつながることを意味します。

いざ資金繰りが厳しくなった時や、突発的な資金需要が発生した時に、「あの時の50万の件ですが、支店長にご相談が…」と直接連絡できる関係が作れていることは、何物にも代えがたい安心材料になります。

金融機関選びは、ある意味で結婚相手選びに似ています。

「誰でもいいから」と近づいてくる相手より、「あなただから」と誠意(支店長の訪問)を見せてくれる相手と付き合うべきなのです。

まとめ:銀行を「品定め」する主導権を持とう

「50万円借りてください」と言われたら、面倒だと思わずに「チャンスが来た」と思ってください。

それは、御社が銀行を品定めするテストの始まりです。

  1. 担当者の熱意や泣き落としにほだされて即決しない。
  2. 借入件数が増えるリスクを理解する。
  3. 「支店長に会いたい」とボールを投げる。
  4. 実際に支店長が来るかどうかで、付き合う価値を判断する。

銀行に使われるのではなく、銀行を使いこなす。

このスタンスを持つだけで、御社の財務戦略はより強固なものになります。

もし現在、複数の銀行からアプローチを受けていて「どこをメインバンクに据えるべきか迷っている」「どの銀行が自社の事業規模に合っているかわからない」という経営者様がいらっしゃれば、ぜひ一度ご相談ください。

御社の財務内容と事業フェーズに合った、最適な金融機関の組み合わせをご提案いたします。

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