赤字でも諦めない!銀行融資の「セーフティ枠」活用ガイド

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
昨今の原材料高や人件費の高騰により、資金繰りに頭を悩ませている経営者様は少なくありません。
「今期は赤字着地になりそうだ。もう銀行からは借りられないかもしれない……」
「コロナ融資の返済も始まるのに、これ以上の追加融資なんて無理だろう……」
そんなふうに、決算書の数字だけを見て諦めてしまっていませんか?
もし、あなたが「赤字=融資不可」という常識にとらわれているとしたら、それは非常にもったいないことです。
実は、銀行融資(特に信用保証協会付き融資)には、一般的な限度額とは別に、緊急時にだけ使える「別枠」が存在します。
この「別枠」の存在を知っているか、そしてその「使い方」を知っているかどうかで、資金調達の可否は大きく変わります。
今回は、税理士の視点から、この仕組みと具体的な活用法について解説します。
信用保証協会の「枠」はクレジットカードと同じ?
まず、日本の銀行融資において重要な役割を果たす「信用保証協会」の仕組みについて整理しましょう。
多くの経営者様は「保証協会付きなら借りやすい」という認識はお持ちですが、その「枠(限度額)」の構造まで理解されている方は意外と多くありません。
この仕組みを理解するために、皆さんに馴染みのあるクレジットカードに例えてみましょう。
通常時は「青色のカード(一般枠)」
通常、皆さんが事業資金を借りる際に使っている保証枠は、いわば「青色のカード」です。
このカードには限度額が決まっており、会社の業績や返済能力(格付け)によって審査されます。
業績が悪化して赤字になったり、すでに借入が多かったりすると、「もう限度額いっぱいです」「これ以上は決済できません」と断られてしまいます。
これが、一般的な融資審査の壁です。
緊急時は「赤色のカード(セーフティネット保証)」
しかし、不況や災害、原油高などの緊急時には、国から特別な「赤色のカード」が配られることがあります。
これが「セーフティネット保証」と呼ばれる制度です。
この赤色のカードには、以下のような強力な特徴があります。
- 「青色のカード」が使えなくても決済できる
一般枠が埋まっていても、別枠として審査を受けられる。 - 緊急時対応の審査基準
赤字などの業況悪化があっても、制度の要件(売上減少など)を満たせば利用できる可能性が高い。
つまり、「青色のカード(一般枠)が使えないから借りられない」のではなく、「赤色のカード(別枠)を持っているのに出していない」だけかもしれないのです。
銀行員任せでは「別枠」は開かない
「そんな便利な枠があるなら、銀行員が提案してくれるはずだ」
そう思われるかもしれません。しかし、現場の実情は少し異なります。
ここに、融資交渉における重要なポイントがあります。
銀行員の心理と行動原理
銀行の担当者にただ単に「運転資金として1,000万円貸してください」と相談したとします。
すると、銀行員は無意識のうちに、手元にあるマニュアル通り「一般枠(青色のカード)」で審査を進めようとします。
彼らにとっての通常業務はあくまで一般枠での審査です。
そのため、決算書を見て赤字であれば、「格付けが低いので、今回は厳しいですね」「本部決裁が通りません」という回答になってしまうのです。
銀行員が意地悪をしているわけではなく、通常のルーチンワークとして処理をするとそうなってしまう、という背景があります。
交渉の鍵は「言葉の選び方」にあり
では、どうすればこの状況を打開できるでしょうか。
重要なのは、経営者である皆さん自身が、銀行員に対して「審査の土俵」を指定することです。
漠然とお願いするのではなく、以下のように切り出してみてください。
「うちは今回のセーフティネット保証5号の対象業種です。売上要件も満たしているので、一般枠ではなくこの『別枠』を使って1,000万円の申し込みをしたいのですが」
この一言には、非常に大きな効果があります。
- 認識の転換
銀行員は「なるほど、今回は通常の審査(青色カード)ではなく、緊急時対応(赤色カード)としての審査案件ですね」と認識を改めます。 - 専門性の提示
制度を理解している経営者だと伝わることで、銀行側もいい加減な対応ができなくなります。
セーフティネット保証は、もともと業況が厳しい会社を支えるために国が用意した制度です。
「赤字だから貸さない」のではなく、「赤字等の事情があるからこそ支える」という趣旨の制度ですので、入り口さえ間違わなければ、事情を汲んでもらいやすくなるのです。
「認定」を受ける一手間を惜しまない
ただし、この「赤色のカード」を使うためには、一つだけクリアしなければならないハードルがあります。
それは、銀行に行く前に(あるいは並行して)、行政の「認定」を受ける必要があるという点です。
具体的には、本店所在地のある市区町村役場で「認定書」を取得する必要があります。
主な制度には以下のようなものがあります。
- セーフティネット保証4号
突発的災害(自然災害など)による売上減少など - セーフティネット保証5号
全国的に業況が悪化している業種(指定業種)に属していることなど - 危機関連保証
リーマンショック級の経済危機や大規模災害時など
「役所に行くのは面倒だ」と感じるかもしれません。
しかし、この認定書一枚が「別枠」への通行手形となります。
ご自身の会社が、こうした認定の対象になっているかどうか。
それを知らずに、普通の融資申し込みをして断られているケースが、現場では非常に多いのが実情です。
まとめ:「使えない」のではなく「使っていない」だけ
融資を断られたとき、多くの経営者は「自社の業績が悪いからだ」と自分を責めてしまいます。
しかし、ここまでお話しした通り、「赤字だから借りられない」のではありません。
「使えるはずのカード(枠)を使っていない」、あるいは「正しいカードの切り方を提示できていない」だけの可能性が高いのです。
特に現在は、物価高騰や円安、不況に対応するための様々な支援制度が動いています。
一般枠がいっぱいでも、別枠なら調達できる余地は残されているかもしれません。
次の一歩
「うちはどの枠が使えるのか?」
「銀行にどう伝えればスムーズに話が進むのか?」
もし気になられた方は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。
決算書の数字を分析するだけでなく、御社が現在活用できる認定制度がないか、徹底的に調査し、最適な交渉材料を揃えるお手伝いをいたします。
諦める前に、まずは手持ちのカードを確認することから始めましょう。
