スナック・バーは銀行融資NGなのか?風営法の誤解と審査通過の抜け道

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
資金調達の相談を受けていると、スナックやバーを経営されている方から、最初から諦め半分でこのような声をいただくことが非常に多くあります。
「うちはスナックだから、どうせ銀行はお金を貸してくれませんよね?」
「以前、窓口に行ったら『風俗営業』扱いされて、門前払いされました」
私から言わせれば、これは非常にもったいない誤解です。
確かに、メガバンクなどの都市銀行では、社内規定で一律NGにしているケースが多いのは事実です。
しかし、日本政策金融公庫や、地元の信用金庫・信用組合であれば、スナックやバーであっても十分に融資のチャンスはあります。
多くの経営者が融資を受けられない本当の理由は、業種そのものではありません。
「銀行員に対して、自社のビジネスモデルを正しく説明できていないこと」
これに尽きます。
今回は、銀行融資の現場を知り尽くしたコンサルタントの視点から、水商売とひと括りにされがちな皆様が、融資審査を通すための「正しいロジック」と「交渉術」について、実務的なノウハウを解説します。
銀行が本当に恐れているのは「お酒」ではなく「コンプライアンス」
まず、敵(銀行)を知ることから始めましょう。
なぜ、銀行はスナックやバーへの融資を渋るのでしょうか?
「お酒を出す店だから信用できない」
そう思っている経営者の方も多いですが、本質はそこではありません。
居酒屋には喜んで融資をするのに、スナックには貸さない。この矛盾がそれを証明しています。
銀行が本当に恐れているのは、「反社会的勢力との繋がり」や「違法営業」といった、コンプライアンス上のリスクです。
万が一、融資先が事件に巻き込まれたり、法令違反で摘発されたりすれば、銀行自体の信用問題に関わるからです。
そのリスク判断の線引きとして銀行が用いているのが、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)です。
特に重要なのが、この法律の「第1号営業」に該当するかどうかという点です。
融資NGの境界線「第1号営業」とは
銀行の審査において、決定的な別れ道となるのが以下の区分です。
- 融資NG(第1号営業)
キャバクラ、ラウンジ、ホストクラブなど。
従業員が客の隣に座って「接待」をする店。 - 融資OK(対象外)
一般的なバー、スナック、居酒屋など。
「接待」を伴わず、カウンター越しに酒類提供を行う飲食店。
あなたの店が後者の「接待をしない店(深夜酒類提供飲食店)」であれば、それは通常の飲食業と同じ土俵で審査が可能です。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
銀行の担当者、特に若手の行員は、この法律の細かい区分を理解していないことが多々あるのです。
「スナック」という単語を聞いただけで、彼らの脳内では「夜の店=風俗営業=融資不可」という図式が完成してしまい、思考停止(シャットアウト)してしまいます。
この「銀行員の無知による誤解」こそが、門前払いの正体なのです。
担当者を黙らせる!プロが使う「キラーフレーズ」
では、窓口で担当者に難色を示されたとき、どう切り返すべきでしょうか。
「うちは怪しい店じゃないですよ」と感情的に訴えても、銀行員には響きません。
彼らは論理と規定で動く生き物だからです。
黙って引き下がらず、以下のロジックで堂々と説明してください。
これが誤解を解くためのキラーフレーズです。
「当店の営業形態は、風営法第1号営業(接待飲食等営業)には該当しません。『深夜酒類提供飲食店』として警察に届出を出しており、法的には通常の飲食業と同じです。なぜ融資対象にならないのか、具体的な理由を教えていただけますか?」
ここまで明確に、かつ法的な用語を使って反論できる経営者はなかなかいません。
これを聞けば、担当者も「この経営者は知識がある。適当な対応はできない」と居住まいを正すはずです。
「接待」の定義を正しく理解する
この説明をする上で、経営者ご自身が「接待」の定義を正しく理解しておく必要があります。
風営法における「接待」とは、以下のような行為を指します。
- 特定のお客様の隣に座って談笑する
- カラオケのデュエットをする
- お客様のタバコに火をつける
- 身体を触れ合わせる
逆に言えば、「カウンター越しにお酒を作り、会話をするだけ」なら、それは接待には当たりません。
もし担当者が言葉に詰まるようなら、「この法的な違いについて、上席の方(支店長や貸付担当役席)に確認していただけますか?」と伝えましょう。
決裁権のある人間であれば、この違いを正確に理解しているはずです。
その看板とSNSが命取り?銀行員はここを見ている
「法的な理屈は通した。これで大丈夫」と安心するのはまだ早いです。
銀行員は融資の相談を受けると、必ず裏であなたの店名でネット検索を行います。
稟議書(りんぎしょ)を書くための材料集めです。
その時、あなたの店のホームページ、Instagram、Facebook、あるいはGoogleマップの口コミ写真に、以下のような要素はありませんか?
- 「かわいい女の子と楽しくおしゃべり!」というキャスト紹介
- 高級感や特別感を出すための「CLUB」「LOUNGE」という店名表記
- きわどい衣装を着たスタッフの写真
- お客様の隣に座っているように見える写真
これらが見つかると、実態がどうであれ「実質的にはキャバクラ(第1号営業)だな」と認定され、即NGになります。
銀行員は「実態」を重視しますが、その実態判断の材料はネット上の情報に大きく依存するからです。
融資を申し込みたいなら、外向けの見せ方が「健全な飲食店」になっているか、今すぐチェックしてください。
誤解を招く表現や写真は、少なくとも融資の審査期間中だけでも修正・削除すべきです。
これは「隠蔽」ではなく、「誤解を防ぐための適切な情報管理」です。
信用保証協会がダメでも諦めない「プロパー融資」という選択肢
融資を申し込む際、多くの銀行は「信用保証協会」の保証をつけることを条件とします。
しかし、信用保証協会は公的な性格が強いため、業種の線引きが非常に厳格です。
場合によっては、銀行がOKでも保証協会がNGを出すこともあります。
もし保証協会の審査が通らなかったとしても、そこで諦めないでください。
地域に根ざした信用金庫・信用組合であれば、まだ道は残されています。
それが、保証協会を介さず、金融機関が自らのリスクでお金を貸す「プロパー融資」です。
信用金庫や信用組合は、メガバンクと違い「地域経済の活性化」を使命としています。
「この街で長く愛されている店を潰したくない」という想いを持ってくれる支店長も少なくありません。
審査を突破するために不可欠な「3つの実績」
もちろん、プロパー融資は銀行側がリスクを負うため、審査のハードルは上がります。
「人情」だけでお金を貸してくれるほど、金融機関は甘くありません。
業種の壁を突破し、プロパー融資を引き出すためには、以下の3つの実績を提示する必要があります。
1. 3期以上の黒字決算
一過性の利益ではなく、安定して利益を出していることの証明です。
「返済能力」を示すもっとも基礎的な資料となります。
2. 毎年の納税証明書
税金を滞納している企業に、銀行はお金を貸しません。
特に飲食業は現金商売のため、売上の計上漏れなどを疑われやすい業種です。
きっちりと納税していることは、コンプライアンス遵守の強力な証拠になります。
3. きれいな帳簿(試算表・資金繰り表)
どんぶり勘定ではなく、日々のお金の流れを正確に把握しているか。
「計数管理ができる経営者である」ということをアピールしてください。
これらを示し、「地域で真面目に商売をしている」という実績(=人としての信用)を支店長に売り込むこと。
これこそが、制度や業種の壁を突破する鍵となります。
まとめ:諦める前に「正しい武器」を持て
「スナックだから」「バーだから」といって、融資を諦める必要は全くありません。
融資を断られる原因のほとんどは、銀行側の「知識不足による誤解」か、経営者側の「説明不足」です。
重要なのは、「自分たちは銀行が嫌う『第1号営業』ではない」と、法的根拠を持って堂々と証明すること。
そして、ネット上の見え方を含め、銀行員が稟議書を書きやすい材料をこちらから提供してあげることです。
もし、ご自身で銀行員を説得する自信がない場合や、すでに銀行から「業種が理由で」と断られてしまった場合は、一度私にご相談ください。
銀行が納得せざるを得ない資料を作成し、誤解を解き、あなたの事業の可能性を正しく伝えるサポートをさせていただきます。
資金の悩みから解放され、心置きなくお客様をおもてなしできる環境を、一緒に作っていきましょう。
