メガバンク依存は危険?中小企業の銀行融資と取引先の選び方

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
皆さんの会社は、現在どこの銀行とメインで取引をされていますか?
もし、社長が「うちはメガバンクがメインバンクだから安心だ」「大手と付き合っていることが会社のステータスだ」と考えていらっしゃるとしたら、少し立ち止まって考えてみてください。
確かに、誰もが知るメガバンクとの取引は、企業のブランド力を高める要素の一つです。
好調な時には、低い金利や充実したサービスを提供してくれる頼もしい存在でしょう。
しかし、いざ経営の雲行きが怪しくなった時、その「巨大さ」が逆に仇となり、会社の命運を分けるリスクになることがあるのです。
今回は、中小企業経営者が知っておくべき「銀行の選び方とリスク管理」について、税理士の視点から掘り下げてお話しします。
その時、誰が「傘」を取り上げるのか?銀行によるスタンスの違い
銀行と一口に言っても、都市銀行(メガバンク)、地方銀行、信用金庫・信用組合など、その形態によって組織の性格や行動原理は大きく異なります。
この違いを理解していないと、有事の際に思わぬ対応をされ、資金繰りに行き詰まる可能性があります。
「雨の日」の対応に現れる本質
銀行取引には、昔からよく言われる「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」という言葉があります。
業績が良い時には融資をしたがり、悪くなると回収に走る、という意味です。
しかし、すべての銀行が同じようにドライなわけではありません。
- 信用金庫・地方銀行
地域密着を掲げており、企業の成長を長期的に支える姿勢が強い傾向にあります。
「雨の日(業績悪化時)」であっても、「なんとか傘を差し出し続けよう(支えよう)」と、親身になって相談に乗ってくれる担当者が多いのが特徴です。 - メガバンク
一方で、メガバンクは株主からの収益責任へのプレッシャーが強く、融資判断が非常に合理的かつドライです。
彼らにとって、中小企業向けの数百万〜数千万円の融資が焦げ付いたとしても、巨大なバランスシートの中では「誤差」の範囲でしかありません。
決断スピードの速さが命取りになることも
メガバンクにとって中小企業融資が「誤差」であるということは、裏を返せば「見切りをつけるスピードが非常に速い」ということを意味します。
業績が悪化した際、再建の可能性をじっくり精査するよりも、「早期に回収して損失を確定させる」という判断が下されやすいのです。
この「回収にかかる」決断の速さが、中小企業にとっては致命傷となり得ます。
銀行交渉の鉄則「全行一致」が生む恐怖
資金繰りが厳しくなった時、最も恐ろしいのは、このメガバンクの「ドライな判断」が、他の支援的な銀行の動きまで封じてしまうことです。
これには、銀行交渉における「全行一致の原則」が深く関わっています。
リスケジュール(条件変更)の壁
会社の資金がショートしそうになった時、まず検討するのが銀行への返済猶予依頼、いわゆる「リスケジュール(リスケ)」です。
元金の返済を一定期間止めてもらい、金利のみを支払うことで資金繰りを改善させる手法です。
このリスケジュールを行う際、実務上、絶対的なルールがあります。
それは、「融資を受けているすべての金融機関が、足並みを揃えて同意しなければならない」という点です。
例えば、A地銀、B信金、Cメガバンクの3行から借りているとします。
「A地銀とB信金は事情を汲んで待ってくれると言っているが、Cメガバンクだけには約束通り返済する」 ということは認められません。
債権者平等の観点から、不公平な扱いは許されないのです。
メガバンクの「抜け駆け」が招くシナリオ
ここで、先ほどのリスクが顕在化します。
地銀や信金が「地域のために支えましょう」とリスケジュールに合意してくれても、ドライな判断をするメガバンクが一行でも反対すれば、交渉は決裂します。
最も怖いのは、メガバンクが次のように通告してくるケースです。
「当行はリスケジュールには応じません。信用保証協会から代位弁済(借金の肩代わり)をしてもらって、この案件から抜けます」
代位弁済とは、返済が滞った際に、保証協会が銀行へ借金を肩代わりして支払う仕組みです。銀行側からすれば、確実に資金が回収できる手段です。
もしメガバンクがこのように「回収して抜ける」と言い出した場合、他の地銀や信金も協力することができなくなります。
一行だけが「安全に抜ける」ことは許されないからです。結果として、全行一致が崩れ、リスケジュールは成立しません。
その先にあるのは、「期限の利益の喪失」(分割払いの権利を失い、一括返済を求められること)であり、最悪の場合は倒産危機に直面することになります。
「金利の安さ」だけで選ぶことの代償
経営者であれば、少しでも経費を削減したいと考えるのは当然です。
そのため、「メガバンクの方が金利が安いから」という理由で、地方銀行や信用金庫からの借入をメガバンクへ借り換えようとするケースがよく見られます。
しかし、財務戦略の観点から申し上げますと、「目先の金利」だけで地銀・信金との縁を切るのは、非常にリスクが高い行為です。
財務戦略としての「地銀・信金」シフト
平時の調子が良い時は、金利の安いメガバンクと付き合っていても問題はありません。
しかし、経営には必ず波があります。
万が一のリスクヘッジを考えるならば、多少金利が高くても、面倒見の良い信用金庫や地方銀行とのパイプを太く維持しておくことが、結果として「会社の寿命」を延ばすことにつながります。
地銀や信金との取引実績は、いわば「経営の保険」のようなものです。
いざという時に、顔の見える関係性が構築できているかどうかが、融資継続やリスケジュールの成否を分けるのです。
まとめ:真のパートナーを選べていますか?
銀行選びは、ビジネスパートナー選びと同じです。
調子の良い「晴れの日」だけでなく、苦しい「雨の日」にも隣にいて、一緒に傘を差してくれる相手を選んでいるでしょうか。
- メガバンクのブランドや金利だけに目を奪われていないか
- ドライな回収リスクを想定したリスクヘッジができているか
- 地域密着型の金融機関との信頼関係(パイプ)は十分か
これらを改めて見直してみてください。
「今の銀行取引のバランスで、将来のリスクに耐えられるだろうか?」
「もしもの時に、本当に会社を支えてくれる銀行を開拓しておきたい」
そのようにお考えの経営者様は、ぜひ一度当事務所までご相談ください。
決算書や現在の取引状況を分析し、御社の実情に合わせた「雨の日にも強い」最適な銀行構成への見直しをサポートさせていただきます。
