資金繰りが劇的に改善する!銀行融資の「借り換え」活用テクニック

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
「売上は順調に伸びているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない」
「毎月の約定返済が重く、常に次の入金のことを考えてしまっている」
もし、あなたが今このような悩みを抱えているのであれば、無理に新しい銀行を開拓して新規融資を申し込むよりも、もっと即効性が高く、かつ現実的な解決策があります。
それが、今回ご紹介する銀行融資の「借り換え(巻き直し)」というテクニックです。
本日は、税理士として数多くの財務改善に立ち会ってきた経験から、返済負担を劇的に減らし、会社の手元資金を厚くするための具体的な実務ノウハウをお伝えします。
そもそも銀行融資の「借り換え(巻き直し)」とは?
「借り換え」とは、簡単に言えば「既存の借金を、新しい条件で借り直すことでリセットする手法」のことです。
経営者の方の中には、「借金を返すためにまた借金をするなんて、自転車操業のようで気が引ける」と、心理的な抵抗感を持たれる方もいらっしゃいます。
真面目な経営者様ほど、その傾向が強いように感じます。
しかし、プロの視点から申し上げますと、これは「自転車操業」ではありません。
銀行取引における非常に有効かつ正当な「財務戦略」の一つです。
銀行融資というのは、一度借りたら契約通りにただ淡々と返し続けるだけのものではありません。
会社の成長フェーズや資金繰りの状況に合わせて、最適な形にメンテナンス(調整)していくものなのです。
では、この「借り換え」を行うことで、具体的に経営数字がどう変わるのか。
ここからは、実際の現場でよく用いる2つのシミュレーション事例を使って解説します。
【テクニック1】毎月の返済額を圧縮し、キャッシュフローを改善する
まず1つ目は、「毎月の返済額を減らす」ことに特化したパターンです。
「とにかく毎月の資金繰りが苦しい」「返済負担を軽くしたい」という場合に有効です。
以下の条件で借入をしている企業を想定してみましょう。
<現在の借入状況>
- 借入残高:900万円
- 残りの返済期間:3年
- 年間の返済額:300万円(月々25万円)
「あと3年頑張れば完済できる。でも、毎月25万円(年間300万円)のキャッシュアウトが現預金を削っていてきつい…」
このような状況の場合、既存の借入をそのまま返すのではなく、条件を変更して借り直しを行います。
具体的には、「残高900万円を、期間6年で借り直す」のです。
新しい融資で得た900万円で、古い900万円の借金を一括返済します(これを「旧債振替」と呼んだりします)。
すると、借入条件は以下のように変化します。
<借り換え後の状況>
- 借入総額:900万円(変化なし)
- 返済期間:6年(3年から延長)
- 年間の返済額:150万円(月々12.5万円)
この手法のポイント
お気づきでしょうか。債務の総額(借金の残高)自体は1円も減っていません。
しかし、返済期間を延ばしたことで、毎月の返済負担はきれいに「半分」になりました。
月々12.5万円、年間にして150万円のキャッシュが手元に残る計算になります。
この浮いた資金を、ただ内部留保するだけでなく、新たな設備投資や、優秀な人材の採用コストに充てることで、事業を再成長させる原資にすることができます。
「早く借金を無くしたい」という気持ちも大切ですが、無理な返済で手元の資金が枯渇し、黒字倒産してしまっては元も子もありません。
まずは足元のキャッシュフローを安定させることが、経営の持続可能性を高めるのです。
【テクニック2】返済負担を変えずに「真水(手元資金)」を確保する
2つ目は、さらにアグレッシブな手法です。
毎月の返済額(痛み)は変えずに、手元の現預金(真水)を増やすパターンです。
先ほどと同じ状況(残高900万円・残り3年・年返済300万円)で考えてみましょう。
今度は、借入金額を増額し、「1,500万円を期間5年」で借り直します。
この手続きを行うと、資金の動きは以下のようになります。
- 銀行から1,500万円の融資が実行される
- その中から、既存の借金900万円を一括返済(相殺)する
- 差額の600万円が会社の手元に残る
<借り換え後の状況>
- 借入総額:1,500万円
- 手元に残る資金(真水):+600万円
- 年間の返済額:300万円(変化なし)
この手法のポイント
ここでの最大のポイントは、「毎月の返済額は300万円(月25万円)のまま変わっていない」という点です。
経営者としての「毎月の資金繰りの感覚(痛み)」は今までと全く同じです。
しかし、会社の通帳残高だけが600万円増えている状態になります。
我々専門家は、この差額で手元に残る資金のことを「真水(まみず)」と呼びます。
これだけの現預金(真水)が確保できていれば、経営の安定感、そして経営者様の精神的な余裕は段違いです。
不測の事態が起きても耐えられますし、チャンスが来た時に即座に動くことも可能になります。
なぜ、新規融資よりも「借り換え」が狙い目なのか
ここまで読んで、「そんなに都合よく銀行が応じてくれるのか?」と疑問に思われたかもしれません。
確かに、全く取引のない銀行に飛び込みで「新規融資」を申し込むのは、今の時代ハードルが高いのが現実です。
しかし、既存取引のある銀行への「借り換え」相談であれば、話は全く別です。銀行員は耳を傾けてくれる傾向にあります。
銀行側のメリット(Win-Winの関係)
銀行の本音を少しお話ししましょう。
銀行にとっても、貸したお金が返ってこなくなる(貸し倒れ)のが一番のリスクです。
無理な返済スケジュールで企業の資金繰りがショートするくらいなら、「返済期間を延ばしてでも、長く安定して返済を続けてほしい」と考えます。
また、借り換えによって返済期間が延びる、あるいは融資額が増えるということは、銀行にとっては「利息収入を得られる期間や金額が増える」ことを意味します。
つまり、借り換えは企業側の一方的なお願いではなく、銀行側にとってもメリットのあるWin-Winの交渉になり得るのです。
特に、これまで遅延なく返済を続けてきた実績のある企業であれば、その信頼が大きな武器となります。
業況が厳しい時こそ交渉のチャンス
「業績が良い時じゃないと、借り換えなんてできないのでは?」
そう思い込んでいる経営者の方も多いですが、決してそうではありません。
むしろ、業況が厳しく、資金繰りがタイトになってきた時こそ、早めに借り換えの相談をすべきです。
銀行は「雨の日に傘を取り上げる」と言われることもありますが、それは「完全に濡れてしまってから(資金が底をついてから)」相談に行くからです。
まだ余力がある段階で、「将来の安全性を高めるために、返済スケジュールを見直したい」という前向きな姿勢で相談を持ちかければ、建設的な議論ができる可能性は十分にあります。
まとめ:銀行融資は「メンテナンス」し続けるもの
本日は、資金繰りを改善するための「借り換え(巻き直し)」テクニックについて解説しました。
- 借り換えは借金のリセットではなく、有効な財務戦略である
- 期間を延ばすことで、毎月の返済額を半分にできる
- 金額を増額して借り直すことで、返済額を変えずに手元資金(真水)を増やせる
- 既存の銀行とはWin-Winの関係を築きやすい
銀行融資は、「一度借りたら、完済するまで我慢して返すもの」ではありません。
会社のその時々の状況に合わせて、返済期間や金額を柔軟にメンテナンスしていくものなのです。
「うちは借り換えできるだろうか?」
「どの銀行に、どのような資料を持って打診すればいい?」
「自社の決算書で、一番有利な条件を引き出すにはどうすればいい?」
もしそのように迷われた際は、ぜひ一度、当事務所までご相談ください。
御社の「借入一覧表(返済予定表)」を拝見できれば、現状のキャッシュフローがどれくらい改善できるか、具体的な数字でシミュレーションいたします。
資金繰りの不安を解消し、本業の成長にフルコミットできる体制を一緒に作っていきましょう。
