税務調査の狙いは時期でわかる!裏事情と加算税を防ぐ「あの一言」

皆さんこんにちは。税理士の中川祐輔です。
毎週月曜日に、経営者なら知っておきたい「税務調査」についての知識を解説しています。
中小企業経営者の皆様にとって、「税務調査」という言葉は、何度耳にしても心穏やかではいられない響きを持っていることでしょう。
「うちは大丈夫だろうか?」
「もし調査が入ったら、何を指摘されるのだろうか?」
日々、多くの経営者様からご相談をいただく中で、私が常に感じていることがあります。
それは、「相手(税務署)の動きの『裏側』を知っているかどうかで、結果は大きく変わる」ということです。
税務調査は、決してランダムに行われているわけではありません。そこには明確な「時期」と「意図」が存在します。
本日は、税理士としての現場経験を踏まえ、税務署のスケジュール感から読み解く「調査の狙い」と、突発的な連絡に対する「実践的な防衛策」について解説します。
専門的な内容も含みますが、貴社の利益を守るための重要な知識ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
税務署の「社内カレンダー」を理解する
まず、税務調査を理解する上で欠かせないのが、税務署内部の年間スケジュール、いわゆる「事務年度」の概念です。
税務署の人事異動は毎年7月に行われます。そのため、税務署における1年は7月から始まり、翌年6月に終わります。
この1年間は、大きく2つの時期に区分されています。
- 上期(秋):7月 〜 12月
- 下期(春):1月 〜 6月
我々一般企業の感覚とは少しズレがありますが、この「上期・下期」という区分けが、調査のターゲット選定に大きく影響しています。
税務署員にとって、人事異動直後の7月から12月(上期)は、新しい体制でじっくりと腰を据えて調査に取り組む時期です。
一方、年明けからの1月から6月(下期)は、確定申告時期を挟むため、より効率的な処理が求められる時期となります。
この内部事情を知っておくだけでも、調査官がどのような心理状態で来るのか、ある程度の予測がつきます。
法人の決算月で決まる「原則的」な調査時期
では、具体的に法人の税務調査はいつ行われるのでしょうか。
実は、決算月によって「原則的な調査時期」が決まっています。
1. 2月〜5月決算の法人:上期(秋)に実施
2月から5月に決算を迎える法人は、申告書を提出してから数ヶ月後にあたる「上期(秋)」、つまり7月から12月の間に調査が行われるのが一般的です。
2. 6月〜1月決算の法人:下期(春)に実施
6月から翌年1月に決算を迎える法人は、年明けの「下期(春)」、つまり1月から6月の間に調査が行われる傾向にあります。
これが、税務署の標準的な業務フローです。まずは、自社の決算月がどちらのパターンに当てはまるかを確認してみてください。
資産税(相続・贈与)にもある「旬」の時期
法人税だけでなく、経営者個人に関わる資産税(相続税や贈与税など)にも、明確な調査の「旬」があります。
- 相続税の調査:上期(秋)に実施
- 譲渡所得・贈与税の調査:下期(春)に実施
相続税の調査が秋に多いのは、税務署内で比較的時間が取れる上期に、重厚な案件である相続税を処理したいという意向があるためです。
一方、確定申告と連動しやすい譲渡所得や贈与税は、春先に行われることが多くなります。
【重要】「原則外」の時期に来る調査は要注意
さて、ここからが最もお伝えしたいポイントです。
もし、貴社の決算月から見て「本来の調査時期ではない」タイミングで税務調査の連絡が来た場合、どう考えるべきでしょうか?
例えば、3月決算(本来は秋調査)の会社に、突然2月に調査の連絡が来たようなケースです。
結論から申し上げます。
「原則から外れているということは、税務署が『何か特殊な情報』を掴んでいる」と警戒すべきです。
通常の定期的な巡回調査ではなく、税務署側が「ここには何かある」と狙いを定めてきている可能性が極めて高いのです。
考えられる理由は主に2つです。
1. 確度の高い「資料せん」が出ている
税務署は、取引先から提出される支払調書や、独自のルートで入手した「資料せん(取引情報の断片)」を大量に保有しています。
これらと貴社の申告内容を突合し、「多額の非違(脱税や申告漏れ)」が見込めると判断された場合、時期を問わず調査に入ることがあります。
2. 「芋づる式」の調査対象になっている
別の調査先に入った際、そこでの取引記録から貴社の名前が浮上し、「その取引内容や状況から見て、貴社にも調査に入る必要がある」と判断されたケースです。
これを我々の業界用語的なニュアンスで言えば、反面調査から派生した実地調査への移行です。
このような「時期外れの調査」の事前通知を受けた際は、通常の調査以上に、過去の帳簿や取引実態の入念な確認が必要です。
「定期的なものだろう」と高を括っていると、足元をすくわれかねません。
個人事業主への調査と「春」の特殊事情
次に、個人事業主(所得税)に関する税務調査について触れておきましょう。
個人に対する調査は、原則として「通年」で実施されています。
ただし、確定申告直後の春(3月下旬〜5月頃)については、少し性質が異なります。
この時期は、本格的な実地調査というよりも、以下のような対応が主に行われます。
- 申告内容の単純な誤りの是正
- 机上(税務署内)での確認で見つかった誤りの確認
- 「お尋ね」文書の発送や電話確認
税務署内部では、これを「事後処理」と呼んでいます。
多忙な確定申告期間が終わった直後の残務整理的な意味合いも含んでいますが、ここには経営者が絶対に知っておくべき「落とし穴」が存在します。
電話一本で結果が変わる?「調査」と「行政指導」の境界線
春先(3月下旬〜5月)に、税務署から電話がかかってきたとします。
「申告内容について少し確認したいことがあるのですが……」
この時、経営者の皆様はどう対応されるでしょうか?
誠実に対応することはもちろん大切ですが、電話の冒頭で必ず確認していただきたいことがあります。
それは、「この連絡は『行政指導』ですか? それとも『調査』ですか?」という一点です。
なぜ、これを聞く必要があるのか。それは「加算税(ペナルティ)」の取り扱いが天と地ほど違うからです。
「行政指導」と「調査」の決定的な違い
- 行政指導の場合:あくまで任意の指導であり、ここで修正申告をしても加算税は課されません(延滞税は別です)。
- 調査(質問検査権の行使)の場合:法律に基づいた調査であり、ここで誤りを指摘されて修正申告をすると、加算税(過少申告加算税など)が課されます。
非常にグレーな話ですが、税務署職員の中には、電話連絡による「行政指導」レベルの指摘であったにもかかわらず、後になって「具体的に誤りを指摘したのだから、これは調査の一環である。したがって加算税を課す」と言い出すケースが散見されます。
これは実務の現場で頻繁に論点となり、トラブルになりがちです。
無用なペナルティを避けるための「一言」
このような事態を防ぐために、春先の電話連絡に対しては、以下の対応を徹底してください。
「今の電話連絡は、行政指導という理解でよろしいですね?」
と、会話の冒頭で明確に区分を確認することです。
相手が「行政指導です」と明言すれば、その後の修正に対して加算税がかかるリスクを排除できます。
逆に、あやふやなまま話を進めてしまい、後から「あれは調査だった」と認定されてしまえば、本来払う必要のなかった数十万円、数万円の加算税を支払うことになりかねません。
まとめ:知識は最大の防御なり
本記事では、税務調査の「時期」と「区分」について解説しました。
- 法人・資産税の調査には「原則的な時期」がある
- 原則から外れた時期の調査は「特殊な情報」を握られている可能性が高い
- 春先の個人の電話連絡は、「行政指導」か「調査」かを必ず確認する
税務調査は、経営者にとってストレスのかかる出来事ですが、相手の手の内を知り、適切な準備と対応を行えば、過度に恐れる必要はありません。
特に「時期外れの調査通知」や「春先の電話連絡」があった場合は、自己判断で処理を進める前に、まずは専門家である税理士にご相談されることを強くお勧めします。
初期対応の良し悪しが、最終的な税額や会社の信用に直結するからです。正しい知識と専門家のサポートで、健全な経営を守り抜きましょう。
「うちは大丈夫か?」と不安を感じられた方は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。
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