節税熱心な会社はなぜ嫌われる?銀行融資が遠のく本当の原因と対策

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

決算期が近づくと、多くの経営者様からこのようなご相談をいただきます。

「今期は予想以上に利益が出そうだから、何か良い節税対策はないか?」

「なるべく税金を払いたくないから、経費を使って利益を圧縮したい」

そのお気持ちは、痛いほどよく分かります。日々、汗水垂らして稼ぎ出した大切な利益です。

そこから多額の税金を持っていかれることに対して、面白くないと感じるのは経営者として当然の心理でしょう。

しかし、私は税理士として、そして財務コンサルタントとして、あえて厳しいことを申し上げなければなりません。

「今後も銀行からスムーズに融資を受け続けたいのであれば、過度な節税はやめてください」

実は、目先の税金を減らそうとするその行為こそが、銀行からの評価を劇的に下げ、将来の資金調達を自ら困難にしているケースが非常に多いのです。

今回は、なぜ節税が融資に悪影響を及ぼすのか、その「本当の理由」について、銀行員の視点を交えて解説します。

銀行が見ているのは「節税テクニック」ではなく「返済能力」

まず、銀行融資における最大の誤解を解いておきましょう。

よく巷では「税金を払っていないと(赤字だと)融資が受けられない」と言われます。これは半分正解ですが、本質的には少しずれています。

銀行は「納税証明書の金額」そのものが好きなのではありません。その背後にある「返済能力」をシビアに見ているのです。

ここで、皆様に質問です。

銀行への借金返済は、会社のお金のどこから支払われるでしょうか?

売上からでしょうか?それとも経費からでしょうか?

答えは、「税引後の利益」です。

(※厳密には「税引後利益+減価償却費」が簡易キャッシュフローとなりますが、基本は利益です)

つまり、過度な節税をして利益を圧縮するという行為は、銀行に対して以下の宣言をしていることと同じになってしまいます。

「うちの会社には、借金を返すための原資(余力)が全くありません」

銀行員は、決算書を見て「この会社にお金を貸して、本当に返ってくるのか?」を判断します。

利益が出ていない(=返済原資がない)会社にお金を貸すことができないのは、金融のプロとして当然の判断なのです。

corporate tax and profit flow diagramの画像

「節税」=「自己資本の減少」という重大な事実

ここが、今回の記事で最もお伝えしたい重要なポイントです。

皆様は、会社の安全性を測る指標である「自己資本比率」を意識されていますでしょうか?

銀行が会社の格付け(ランク付け)を行う際、最も重視する数字の一つがこの「自己資本比率」です。

自己資本が厚ければ厚いほど、倒産しにくい強い会社とみなされます。

では、この「自己資本(純資産)」を増やすにはどうすればよいでしょうか?

その方法は、突き詰めると一つしかありません。

「利益を出して適正に税金を払い、残ったお金を内部留保として積み上げること」

これだけです。これ以外に、自己資本を確実に増やしていく王道はありません。

経費を無理やり増やして利益を消してしまえば、税金は減りますが、いつまで経っても会社の「自己資本」は厚くなりません。

10年経っても20年経っても、会社の財務基盤はペラペラのままです。

「税金を払う会社」と「節税する会社」の未来の格差

ここで、税金に対する考え方で、会社の未来がどう変わるかを比較してみましょう。

  • 過度な節税をした会社
    • メリット:目先の税金支払いが減る。
    • デメリット:自己資本が増えないため、銀行格付けが低いまま推移する。いざという時に融資が受けられない、あるいは金利が高止まりする。
  • しっかり納税した会社
    • デメリット:税金の支払いが発生する。
    • メリット:自己資本が積み上がり、銀行格付けが上がる。結果、融資枠が拡大し、より安い金利で資金調達ができるようになる。

いかがでしょうか。

税金は単なる「コスト」や「損失」ではありません。

財務の視点から見れば、「会社の信用力(格付け)を高めるための必要経費」であり、「将来、有事の際に銀行から守ってもらうための保険料」と捉えることができるのです。

balance sheet comparison chartの画像

その節税商品は、本当に会社にとって「得」ですか?

決算期になるとよく提案されるのが、保険商品やオペレーティングリースなどを使った「利益の繰り延べ」商品です。

「今の利益を将来に回して、課税を先送りにできる」という点ではメリットがあります。

しかし、財務コンサルタントの視点でバランスシート(BS)全体を見た時、そこには大きなリスクが潜んでいます。

それは、「手元のキャッシュ(現預金)が確実に減る」ということです。

中小企業経営において、最大の武器であり防具となるのは「キャッシュ(現預金)」です。

節税商品の多くは、税金を減らす効果以上に、多額の現金を社外に流出させます。

「節税のために数千万円の現金を社外に出してしまい、いざ資金繰りが厳しくなった時に手元にお金がない」

「慌てて銀行に駆け込んでも、決算書上の利益(自己資本)が出ていないため貸してもらえない」

これが、節税に走った会社が陥る最悪のシナリオです。

「節税」という甘い言葉の響きだけに惑わされず、「キャッシュフロー」と「バランスシート」への影響を冷静に天秤にかける必要があります。

銀行が「貸したくてたまらない会社」になるための王道

もちろん、法律の範囲を超えて無駄な税金を払う必要は全くありません。適正な税務処理を行うことは大前提です。

しかし、もしあなたが、「将来もっと会社を大きく成長させたい」「コロナショックのような危機があった時、銀行がすぐに助けてくれる会社にしたい」とお考えなら、取るべき選択は明確です。

しっかり本業で利益を出し、堂々と税金を払い、内部留保を厚くする。

非常に地味に見えるかもしれませんが、これが銀行員が「この会社には貸したい(貸さなきゃ損だ)」と判断する、王道の財務戦略です。

小手先のテクニックではなく、王道を歩む会社こそが、最終的に生き残る強い会社となります。

強い会社を作るために、経営者が今すぐすべき決断

「今まで節税ばかり考えていたが、視点が変わった」

「では、うちは具体的にどの程度の利益水準を目指せばいいのか?」

「今の決算書の内容で、銀行はどう評価しているのか?」

もしそのように感じられたなら、今が会社の財務体質を変えるチャンスです。

当事務所では、単なる税金計算や節税提案だけでなく、銀行目線に基づいた「融資に強い財務体質づくり」のサポートを行っています。

「目先の節税」と「将来の成長」、どちらを取るべきか迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。

貴社の決算書を分析し、最適な財務戦略を一緒に描きましょう。

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