経常利益1,000万円が分岐点!「即時償却」で攻めの法人税対策

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。
「節税対策なんて、利益が億単位の会社がやることでしょ?」
「うちはまだ規模が小さいから、策を弄さずに普通に納税しますよ」
日々のコンサルティングの現場で、経営者様からこのようなお声をいただくことは少なくありません。
確かに、過度な節税は資金繰りを悪化させるリスクもあり、慎重になる姿勢は経営者として非常に健全です。
しかし、数多くの決算書を見続け、企業の成長フェーズに伴走してきた私の感覚から申し上げますと、本格的な法人税対策を検討すべき「明確な分岐点」は、もっと身近なところに存在します。
そのラインはずばり、「経常利益1,000万円」です。
なぜ、1,000万円なのか?
この数字を超えたとき、経営者は何を考え、どう動くべきなのか?
今回は、この数字が持つ経営的な意味と、ここから可能になる「攻めの節税(即時償却)」について、現場の視点を交えて深く解説します。
経常利益1,000万円が「攻めの節税」へのスタートラインである理由
多くの経営者様が「税金が高くなった」と実感されるのが、利益が800万円を超え、法人税の実効税率が上がるタイミングです。
もちろん、税負担が増すことも理由の一つですが、私が「経常利益1,000万円」を重視する理由は、単に税率の問題だけではありません。
最大の理由は、「投資の選択肢が一気に広がり、『資産の雪だるま』を作れるフェーズに入るから」です。
金融機関の評価と「レバレッジ」の効果
利益が1,000万円出ているということは、極端な話をすれば「1,000万円の設備投資をしても、会社が揺らがない体力がある」という証明になります。
この規模感になると、金融機関からの評価(格付け)も変わり、融資を受けやすくなります。
ここで重要になるのが「レバレッジ(借入)」という考え方です。
自己資金だけで節税対策をしようとすると、手元のキャッシュが減ってしまいます。
しかし、信用力を背景に銀行融資を活用して資産を購入できれば、手元資金を温存したまま、あるいは最小限の持ち出しで、大きな投資が可能になります。
- 銀行融資を活用して資産を購入する
- その資産で大きな減価償却費を作り、利益を圧縮する
- 節税できた分でキャッシュフローを改善し、次の投資へ回す
この「資産が資産を生むサイクル(雪だるま)」を作れるかどうかの境界線が、およそ経常利益1,000万円なのです。
このラインを超えたら、守りの経営から「税金をコントロールして資産に変える経営」へとシフトチェンジすべき合図と言えます。
個人の限界と法人の特権。「即時償却」という強力な武器
次に、具体的な手法についてお話しします。
ここでぜひ知っておいていただきたいのが、「個人事業主」と「法人」の決定的なルールの違いです。
同じ1,000万円の利益があっても、その扱い方は天と地ほどの差があります。
個人事業主の場合:耐用年数の縛り
個人事業主が設備投資を行った場合、原則として「減価償却」のルールに従う必要があります。
例えば、1,000万円の機械を購入しても、その全額をその年の経費にすることはできません。
法定耐用年数(その資産が使えると定められた期間)に応じて、5年や10年かけて少しずつ経費計上していくことになります。
つまり、「今年利益が出たから設備を買ったのに、今年の税金はあまり減らない」という事態が起こります。
法人の場合:「即時償却」の活用
一方で、法人には強力な武器が用意されています。
国の優遇税制(中小企業経営強化税制など)や特定のスキームを活用することで、購入した資産を初年度に全額経費にする「即時償却(一括償却)」が可能なケースが多くあるのです。
例えば、期末に1,000万円の利益着地が見込まれるとします。
このタイミングで、要件を満たす1,000万円の資産(例えば最新のAIサーバーや、生産性向上に資する特定設備など)を購入し、即時償却を適用します。
すると、帳簿上の利益1,000万円に対し、同額の経費1,000万円が計上されるため、その期の利益を一気に圧縮することが可能です。
これは、個人の税務ではなかなか実現できない、法人ならではの特権的なメリットです。
「突発的な利益」こそ、未来への投資に変えるチャンス
私のもとに緊急でご相談に来られるケースで最も多いのが、「今期、予想外に利益が出てしまった」というパターンです。
- たまたま大型の案件が決まり、利益率が跳ね上がった
- 長年所有していた不動産が売れ、譲渡益が出た
- 事業が急成長し、想定よりも早く目標を達成した
経営者として嬉しい悲鳴ではありますが、税務の観点からは「緊急事態」です。
こうした「一時的な利益」に対して何もしなければ、その利益の約30%〜35%前後が法人税等としてキャッシュアウトし、手元には何も残りません。
税金を支払って終わるか、資産を残すか
しかし、このタイミングこそが「即時償却」の出番です。
突発的な利益を原資として、即時償却が可能な投資を行えば、本来税金として消えていたはずのお金を、社内の「資産」に形を変えて残すことができます。
この「資産」は、単なる節税商品である必要はありません。
例えば、先ほど挙げたAIサーバーや最新設備であれば、将来の売上を生むエンジンになります。
あるいは、流動性の高い資産に変えておけば、将来、経営が悪化した際に売却して現金化し、会社の危機を救う「簿外資産(含み益のある資産)」としての役割も果たします。
「税金の支払いを将来に繰り延べつつ、手元に資産を残し、経営の安定性を高める」
これこそが、税理士として推奨したい戦略的な節税の本質です。
まとめ:利益予測は早めが吉。決算3ヶ月前の行動が命運を分ける
ここまで、経常利益1,000万円を起点とした「即時償却」のメリットについてお話ししてきました。
最後に、最も重要な注意点をお伝えします。
それは、「時間との勝負」であるということです。
即時償却ができるような国の制度(中小企業経営強化税制など)や投資商品は、決算ギリギリになってから「来週が決算なのでなんとかしたい」と相談されても、間に合わないものがほとんどです。
特に国の認定が必要な制度を利用する場合、申請から認定までに1ヶ月〜2ヶ月かかることも珍しくありません。
また、人気の高い投資対象は、期末には売り切れていることも多々あります。
私からの提案
経常利益1,000万円が見えてきたら、それは御社が「単に税金を払うステージ」から「税金をコントロールして資産に変えるステージ」に入った合図です。
「今期は1,000万円いきそうだ」
「突発的な利益が出そうだ」
そう感じたら、少なくとも決算の3ヶ月前には一度ご相談ください。
早めにご相談いただければ、即時償却のスキーム活用はもちろん、来期以降の資金繰りまで見据えた、御社の状況に最適な「オーダーメイドの節税プラン」をご提案させていただきます。
せっかくの利益を、ただ税金として納めるのではなく、次の成長のための「種まき」に使いませんか?
未来を見据える経営者様の、賢明なご判断をお待ちしております。
まずは現状の決算予測を用いたシミュレーションを行い、即時償却による節税効果を具体的な数字で出してみませんか?
無料相談にて承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
