知らないと損する「制度融資」の活用術と「プロパー融資」獲得への最短ルート

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。

中小企業の経営者であれば、誰もが一度は資金調達の壁に直面するのではないでしょうか。

これまで数多くの経営者様から融資に関するご相談を受けてきましたが、多くの方が「知っていればもっと有利に進められたのに…」という情報を逃している現実を目の当たりにしてきました。

特に、銀行融資には明確な「攻略法」とも言えるセオリーが存在します。それは、「制度融資」を戦略的に活用し、最終的に銀行からの絶対的な信頼の証である「プロパー融資」へとステップアップしていく王道ルートです。

この記事では、私が現場で培ってきた知見を基に、この王道ルートを誰にでも分かりやすく、そして具体的に解説していきます。

まずはコレから!中小企業の強い味方「制度融資」とは?

銀行融資と聞くと、銀行独自の審査や金利をイメージされる方が多いかもしれません。

しかし、中小企業がまず活用を検討すべきなのは、民間金融機関からの融資の中でも特に有利な「制度融資」です。

これは、国や都道府県、市区町村といった自治体が、地域経済の活性化や中小企業の育成を目的として設けている特別な融資制度です。

自治体があらかじめ金利や期間などの融資条件を定めているため、どの金融機関で申し込んでも、その自治体が決めた同じ条件で融資を受けられるのが特徴です。

いわば、自治体が中小企業の成長を後押ししてくれる、公的なサポート付きの融資と言えるでしょう。

見逃し厳禁!制度融資がもたらす3つの絶大なメリット

では、なぜこれほどまでに制度融資の活用をおすすめするのか。

それには、通常の融資にはない、中小企業にとって非常に魅力的な3つのメリットがあるからです。

  • 1. 驚きの低金利(利子補給)
    制度融資の多くには「利子補給」という仕組みが付いています。
    これは、私たちが金融機関に支払う金利の一部を、自治体が代わりに負担してくれるというものです。
    結果として、私たちは非常に低い実質金利で資金を借り入れることが可能になります。
  • 2. 負担を軽減する保証料の補助
    多くの中小企業が融資を受ける際には、信用保証協会に「保証料」を支払う必要があります。
    制度融資の中には、この保証料の一部、あるいは全額を自治体が補助してくれる制度も存在します。
    これは、資金調達にかかる初期コストを大きく削減できる、非常に大きなメリットです。
  • 3. 圧倒的な実行可能性の高さ
    自治体は、地域の中小企業に育ってほしいという明確な意図をもってこの制度を設けています。
    そのため、自治体が定めている条件(例えば、その地域で事業を営んでいる、税金をきちんと納めているなど)さえ満たせば、融資が実行される可能性が極めて高いのも大きな魅力です。

まさに、中小企業にとっては「使わないと損」と断言できる、非常に有利な制度なのです。

【最重要】支払う利息が激変!制度融資は「使う順番」が命

この非常にお得な制度融資ですが、一つだけ、絶対に知っておかなければならない「鉄則」があります。

これを間違うだけで、将来的に支払う利息や保証料に数十万、数百万円単位の差が生まれることもある、極めて重要なポイントです。

それは、「まず市区町村の制度を使い、その後に都道府県の制度を使う」という順番です。

なぜ「市区町村」の制度が先なのか?

多くのケースで、都道府県の制度よりも市区町村(市や区)の制度のほうが、より条件が有利に設定されています。

具体的には、金利がさらに低かったり、利子補給や保証料補助が手厚かったりします。

ただし、その分、融資を受けられる金額の「枠」は小さめに設定されているのが一般的です。

一方で、都道府県の制度は、市区町村の制度よりは少し条件がマイルドになるものの、融資枠は大きく設定されています。

順番を間違えた場合の悲劇

ここで多くの経営者が陥りがちなのが、「大きな枠が使えるから」と、安易に都道府県の制度から手をつけてしまうケースです。

もし先に融資枠の大きい都道府県の制度を使ってしまうと、どうなるでしょうか。

金融機関の担当者からは、「〇〇社さんは、すでに都道府県の制度で十分な融資枠を確保されていますね」と見なされてしまいます。

その結果、後からもっと有利な市区町村の制度を使いたくても、「すでに枠は十分」という理由で利用できなくなってしまうのです。

これは、融資の現場で本当によく見られる失敗例で、本来であれば払わなくて済んだはずの利息や保証料を、長期間にわたって支払い続けることになりかねません。

制度利用の「入場チケット」とは?

この鉄則とあわせて、もう一つ覚えておくべきことがあります。

それは、制度融資を利用するための「入場チケット」の存在です。チケットとは、その自治体での「納税実績」です。

自治体からすれば、税金をきちんと納めて地域に貢献してくれている企業を応援したいと考えるのは当然のことです。

まずは自社の所在地の「市区町村」にどのような制度融資があるかを確認し、その利用条件をしっかりとチェックすることから始めましょう。

次なるステップへ!銀行からの信頼の証「プロパー融資」とは

制度融資を賢く活用し、事業が軌道に乗ってきたら、次なるステップとして目指したいのが「プロパー融資」です。

プロパー融資とは、信用保証協会の保証を付けずに、金融機関が100%自らの責任で実行する融資のことです。

これは、銀行が「この会社なら、万が一のことがあってもきちんと返済してくれるだろう」と、企業の事業性や将来性を絶対的に信頼している証に他なりません。

プロパー融資を受けられるということは、金融機関から「優良な取引先」として認められたステータスであり、今後の資金調達が格段にスムーズになります。

プロパー融資獲得へのロードマップ【3つのステップ】

では、どうすればプロパー融資を獲得できるのでしょうか。これにも計画的なステップが存在します。

  • Step1:アプローチと関係構築
    理想的なのは、日頃の取引の中から銀行側から「ぜひプロパーで融資させてください」と声がかかることです。
    そうでない場合は、自らメインバンクの口座を開設し、入出金や給与振込などでコツコツと取引実績を作るところからスタートします。
    有力な取引先からの紹介も非常に有効なアプローチです。
  • Step2:信頼を積み重ねる実績作り
    銀行との信頼関係は、一朝一夕には築けません。
    まずは前述の制度融資などを活用し、「マル保」(信用保証協会付き融資)で融資を受け、期日通りにきちんと返済を続けます。
    当たり前のことですが、「約束したことを、当たり前に守る」という行動の積み重ねが、「この会社は信頼できる」という評価に繋がり、強固な信頼関係の土台となるのです。
  • Step3:戦略的なプロパーへの切り替え
    マル保での着実な返済実績が評価されれば、いよいよ銀行からプロパー融資への道が開かれます。
    ここで、税理士としてぜひお伝えしたい戦略的なポイントがあります。それは、「マル保の保証枠を、あえて使い切らずに温存しておく」ことです。
    もし、現在の取引銀行でプロパー融資の打診が難しい場合でも、別の銀行と新たに取引を始めたいと考えたとします。
    その際に、この「保証協会の空き枠」が、非常に強力な交渉材料になるのです。
    「御行とぜひお取引を始めたいのですが、まだ保証協会の枠がこれだけ残っています。まずはマル保で一度、お取引を始めていただけませんか?」
    このように持ちかけることで、新しい銀行もリスクを抑えて取引を開始できるため、交渉が格段に進めやすくなります。
    この「カード」を最後まで持っておくことが、財務戦略上のしたたかさと言えるでしょう。

【コラム】不動産担保の評価額、その裏側を少しだけ解説

融資の際、不動産を担保に入れるケースもあります。その評価額がどのように決まるかご存知でしょうか。

基本的な計算式は以下の通りです。

担保評価額=評価額(路線価など)×掛目(かけめ)

「掛目」とは、将来の価格変動リスクなどを考慮して、銀行が設定する割引率のようなものです。

例えば、1億円の価値があるとされる土地でも、銀行は1億円そのままを担保価値とは見ません。

一般的に、この掛目は60%~80%程度で設定されることが多いです。

しかし、リスクが低いと見なされる住宅ローンや、今回解説したような信用保証協会付き融資では、80%~90%といった高い掛目が適用されることもあります。

これも、制度融資が有利である一因と言えます。

まとめ:成長戦略を描くための融資活用術

今回は、中小企業が活用すべき「制度融資」の戦略的な使い方と、その先の目標となる「プロパー融資」への道筋を具体的に解説しました。

  • 制度融資は「市区町村→都道府県」の順番で使い、有利な条件を最大限活用する。
  • マル保での返済実績を積み重ね、銀行との信頼関係を構築する。
  • 保証協会の枠を戦略的に温存し、プロパー融資や他行との交渉に備える。

これらのセオリーは、単に資金を借りるためのテクニックではありません。

自社の成長段階に合わせて融資制度を賢く活用し、財務体質を強化していくための「経営戦略」そのものです。

まずは、あなたの会社の所在地である「市区町村」の役所のウェブサイトを訪れ、どのような制度融資があるか調べてみることから始めてみてください。

もし、「自社に最適な方法は何か?」「銀行との具体的な交渉をどう進めればいいか?」といったお悩みがあれば、いつでもご相談ください。

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