節税対策よりも効果的!?役員報酬の手取りを最大化する裏ワザ

皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。

毎週水曜日に、経営者なら知っておきたい「節税対策」についての知識を解説しています。

「会社の利益は出ているのに、役員報酬を上げてもなぜか手取りが思ったように増えない…」

多くの経営者様が、このようなジレンマを抱えていらっしゃいます。

売上を伸ばし、利益を確保するために日々奮闘されているにもかかわらず、個人の可処分所得が増えなければ、モチベーションを維持するのも難しいかもしれません。

この「手取りが増えない問題」の根源は、実は所得税や住民税よりも、「社会保険料」の負担が極めて重いという現実にあります。

特に、年収1,000万円を超えるあたりから、その負担率は急激に上昇し、経営者の肩に重くのしかかります。

しかし、ご安心ください。この高すぎる社会保険料を、完全に合法的な方法で劇的に削減するスキームが存在します。それが、今回ご紹介する「事前確定届出給与」という制度です。

この記事では、数多くの企業の財務改善に携わってきた税理士の視点から、「事前確定届出給与」の仕組みと、それがもたらす驚くべき効果について、具体的なシミュレーションを交えながら徹底的に解説します。

なぜ手取りは増えない?経営者を悩ませる「社会保険料の壁」

役員報酬から天引きされるものは、大きく分けて「税金(所得税・住民税)」と「社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)」です。

多くの方は節税というと「税金」にばかり目が行きがちですが、本当に注目すべきは「社会保険料」のほうです。

社会保険料は、毎月の役員報酬額(標準報酬月額)を基に計算されます。そして、この料率は決して低いものではありません。

会社負担分と個人負担分を合わせると、報酬額に対して約30%もの負担になるケースも珍しくありません。

特に、月収100万円(年収1,200万円)前後の役員報酬は、最も社会保険料の負担率が高くなるゾーンです。

このゾーンにいる経営者様は、報酬を増やしても、その分だけ社会保険料も増えてしまい、「何のために頑張っているのか…」と徒労感を覚えやすいのです。

【合法】社会保険料を劇的に削減する「事前確定届出給与」とは?

この重い社会保険料負担を解決する切り札が「事前確定届出給与」です。

「顧問税理士に相談したら、あまり良い顔をされなかった」という経験をお持ちの経営者様もいらっしゃるかもしれません。

確かに、手続きが少し煩雑であるため、積極的に提案しない税理士がいるのも事実です。

しかし、この制度は国税庁が正式に認めている完全に合法な役員給与の支払い方です。

正しく手続きを行えば、後から追徴課税が発生するようなリスクは一切ありません。

では、その仕組みはどのようなものでしょうか。概要は非常にシンプルです。

  • ① 毎月の役員報酬(月給)を、社会保険料が低くなる水準まで極端に下げる。
  • ② 下げた分の報酬を「役員賞与(ボーナス)」として、特定の時期にまとめて支払う。
  • ③ 「いつ、いくらの賞与を支払うか」を事前に税務署へ届け出て、その通りに支給する。

役員への賞与は、原則として経費(損金)にはなりませんが、この「事前確定届出給与」の手続きを踏むことで、全額を損金として算入できるようになります。

これにより、法人税の負担を増やすことなく、経営者個人の社会保険料だけを劇的に下げることが可能になるのです。

年間130万円も手取りが増加!衝撃のシミュレーション

言葉だけの説明では、そのインパクトは伝わりにくいでしょう。

ここで、具体的な数字を使って、どれほどの効果があるのかをシミュレーションしてみます。

ケーススタディ:年収1,200万円の社長の場合

多くの企業で一つの目安となる、年間の役員報酬総額1,200万円のケースで考えてみましょう。

【変更前】一般的な役員報酬設定

  • 役員報酬:月額100万円 × 12ヶ月 = 年間 1,200万円
  • この場合の年間社会保険料(個人負担分):約278万円

【変更後】「事前確定届出給与」を活用した場合

報酬の年間総額は変えずに、内訳だけを次のように変更します。

  • 月々の役員報酬:月額5万円 × 12ヶ月 = 年間 60万円
  • 役員賞与:1,140万円(年1回支給)

この設定に変更すると、社会保険料はどうなるでしょうか。

  • 変更後の年間社会保険料(個人負担分):約122万円

【効果のまとめ】

結果は一目瞭然です。

  • 社会保険料の削減額(個人負担)278万円−122万円=156万円
  • 所得税・住民税の変動賞与として一度に大きな金額を受け取るため、所得税・住民税の負担は若干増加します。このケースでは、約26万円の増額となります。
  • 最終的な手取り増加額156万円(社保削減)−26万円(税金増)=130万円

いかがでしょうか。年間の役員報酬総額は一切変えずに、支払い方を変えるだけで、経営者個人の手取りが年間130万円も増えるのです。

さらに、忘れてはならないのが会社側のメリットです。社会保険料は会社と個人が折半して負担しています。

つまり、個人の負担が156万円減るということは、会社の負担も同額の156万円削減されることを意味します。

個人と法人を合わせると、実に年間300万円以上のキャッシュフロー改善につながる、非常に強力なスキームなのです。

「事前確定届出給与」スキームの仕組みと注意点

なぜ、このようなことが可能になるのでしょうか。

なぜ社会保険料が下がるのか?

これは単に、月々の給与にかかる社会保険料率と、賞与にかかる社会保険料率(の計算根拠や上限)が異なるという制度上の仕組みを利用しているだけです。

厳密には、賞与にかかる社会保険料には「上限額」が設けられています(健康保険は年間累計573万円、厚生年金は1回あたり150万円)。

今回のシミュレーションのように、賞与額がこの上限を大きく超える場合、上限を超えた部分には社会保険料がかからないため、結果的に全体の負担額が大幅に下がるのです。

実行する上での最重要ルール

この話を聞くと、頭の切れる経営者様ほど「それなら月々の報酬をゼロにして、毎月賞与として支払えばもっと得なのでは?」と考えがちですが、それはできません。

社会保険制度上、「賞与」と見なされるためには、支給回数が年3回までと定められています。

もし、年4回以上にわたって賞与を支給してしまうと、それは実質的に月々の給与と同じもの(報酬)と見なされてしまいます。

その結果、せっかくの社会保険料削減効果は完全に失われてしまうため、このルールは絶対に守らなければなりません。

まとめ:賢い役員報酬設計で会社と個人のキャッシュを最大化する

今回は、経営者の手取りを最大化するための強力な一手として「事前確定届出給与」を解説しました。

【本日のポイント】

  • 経営者の手取りを圧迫する最大の要因は「社会保険料」である。
  • 「事前確定届出給与」は、月給を下げて賞与で受け取ることで社会保険料を合法的に削減する制度。
  • 年収1,200万円の例では、個人の手取りが130万円増加し、会社の負担も156万円削減できる。
  • 実行する際は「賞与の支給は年3回まで」というルールを厳守する必要がある。

このスキームは、一度設定すれば毎年大きな恩恵を受け続けることができる、非常に効果の高い節税策です。

ただし、将来的な制度変更のリスクがゼロではないことや、一時的にせよ会社のキャッシュフローに影響を与えるため、導入には専門的な知識と計画的な実行が不可欠です。

自社に最適な役員報酬の設計や、より具体的な節税スキームについてご興味のある方は、ぜひ一度、個別相談にてお声がけください。

貴社の状況に合わせた、最善の一手をご提案させていただきます。

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