銀行融資の攻略法:売上規模に応じた戦略的な資金調達のコツ
皆さんこんにちは。クラウド会計で経営支援を提供する千葉の税理士、中川祐輔です。
毎週金曜日に、経営者なら知っておきたい「銀行融資」についての知識を解説しています。
中小企業における銀行融資・資金調達は、企業の成長に欠かせない重要な要素です。しかし、多くの経営者は銀行選びの戦略的な重要性を見落としています。
本記事では、企業規模に応じた最適な銀行融資の選択方法と、効果的な資金調達の戦略についてご説明します。
企業成長と銀行取引の重要性
成長に伴う資金需要の変化
企業は売上ゼロからスタートし、3,000万円、5,000万円、1億円、3億円、5億円、10億円と段階的に成長していきます。
この過程で、必要な人材も増え、仕入れ規模も拡大し、運転資金や設備投資の規模も大きく変化していきます。
まさに成長期の子供のように、企業も年々大きくなっていきます。
昨年と比べて売上が1.5倍、2倍と伸びている企業では、それに応じた資金需要も生まれます。
このような成長に対して、小規模な金融機関では十分な資金供給が難しくなってくるのです。
メインバンク戦略の新しい考え方
従来の「一行集中型」のメインバンク取引から、企業規模に応じた「複数行取引」への移行が重要となってきています。
これは単なる取引先の分散ではなく、企業の成長ステージに合わせた戦略的な選択なのです。
売上規模別の最適な銀行選択
成長初期の銀行取引(売上5億円まで)
初期段階では、地域密着型の信用金庫との取引が中心となります。信用金庫は中小企業の事情を理解し、きめ細かな対応が可能です。
この時期に着実な返済実績を積み上げることで、将来の銀行取引拡大に向けた信用力を構築することができます。
成長期における銀行取引の進化(売上5億円から10億円)
売上が5億円を超えてくると、地方銀行へのシフトを検討する時期となります。
ただし、この移行は急激に行うのではなく、新規の融資案件を地方銀行に依頼しながら、徐々にメイン取引をシフトしていくのが賢明です。
既存の信用金庫との取引は、これまでの融資が完済されるまでしっかりと継続します。
発展期の銀行取引戦略(売上10億円以上)
売上が10億円を超える段階では、「平行メイン体制」の構築が推奨されます。
具体的には、2つのメインバンク(各30%)と2つのサブ銀行(各20%)による「3対3対2対2」の取引構成を目指します。
この体制により、銀行間に適度な競争原理が働き、融資条件の改善や安定的な資金調達が可能となります。
大規模展開期の銀行取引(売上30億円以上)
売上が30億円を超えると、メガバンクや政府系金融機関との取引を検討する段階となります。
特に大規模な設備投資や海外展開を視野に入れる場合、商工中金や日本政策投資銀行など、長期的な視点での融資が可能な金融機関との取引が重要になってきます。
銀行取引見直しの実践ポイント
銀行取引の見直しは、慎重に進める必要があります。
既存の融資はそのまま完済まで継続し、新規の資金需要を新しい取引銀行に依頼していく段階的なアプローチが重要です。
また、この戦略を実行する前提として、自社の財務内容の健全性が求められます。
必要に応じて、3〜5年の改善計画を立て、着実に実行していくことが成功への鍵となります。
まとめ
企業の成長に合わせた銀行取引の最適化は、経営戦略として非常に重要です。
売上規模に応じて、取引銀行の構成を見直し、適切な資金調達体制を構築することで、持続的な成長を実現することができます。
まずは自社の現状を分析し、将来を見据えた銀行取引の戦略を立てることをお勧めします。
財務内容に課題がある場合は、まずその改善に取り組み、段階的に理想の銀行取引体制を構築していきましょう。